第8話 狩猟場の構築
ソ連軍の第一波をなんとか撃退した後、シモは独自に行動を始めた。
塹壕に篭っての撃ち合いでは、物量に勝る敵にいずれ押し潰される。彼の役割は「狙撃手」として、敵の指揮系統や通信兵をピンポイントで排除し、進軍を遅らせることだった。
彼は誰もいない森の奥深く、敵陣の側面が見渡せる小高い丘に潜伏場所を選んだ。
そこでの彼の準備は、芸術的ですらあった。
まず、伏せる場所の雪を足で踏み固める。
次に、銃口を置く位置の雪に水をかけ、カチカチに凍らせる。
「よし……」
これで発射時のマズルフラッシュ(発砲炎)で雪が舞い上がることはない。
自分自身の位置も入念に偽装する。白いシーツで作った雪中迷彩を頭から被り、ライフルの銃身には白い包帯を巻きつけた。
そして仕上げに、彼は一握りの雪を口の中に放り込んだ。
冷たさで歯茎が痛む。だが、これで口内の温度が下がり、白い息が出なくなる。
準備は整った。
彼は雪と同化した。
そこにあるのは、ただの雪の塊だ。誰もそこに、死神が潜んでいるとは気づかない。
マイナス30度。
手足の感覚が徐々に失われていく。だが、シモの集中力は研ぎ澄まされる一方だった。
じっと待つ。
森の木々が、彼を見守っていた。
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