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白き死神の挽歌(エレジー) ——極寒のコッラ、五〇五の墓標  作者: beens
第2章 コッラの奇跡 ——守るべきもの

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第7話 最初の引き金

 開戦から数日後。最初の本格的な戦闘が始まった。

 

 地響きとともに、森の中から灰色の塊が現れた。ソ連兵だ。

 一人や二人ではない。蟻の大群のように、視界を埋め尽くすほどの歩兵が、雄叫びを上げて突撃してきたのだ。

「ウラー! ウラー!(万歳)」

 その声は、地獄の底から響く怨嗟の声のように聞こえた。

「撃てッ! 撃ちまくれ!」

 フィンランド軍の塹壕から、一斉に射撃が開始される。

 機関銃が火を噴き、ライフルが乾いた音を立てる。

 

 シモは雪に掘った穴の中に伏せていた。

 心臓が早鐘を打っている。指先が微かに震える。訓練とは違う。的は紙ではなく、生きている人間だ。

 スコープのないアイアンサイトの向こうに、こちらへ走ってくる若いソ連兵の顔が見えた。恐怖に歪み、必死の形相をしている。彼にも家族がいるのだろうか。

 

(迷うな)

 シモは自分に言い聞かせた。

 もし撃たなければ、隣にいるアンッティが殺される。後ろにいる避難民が殺される。

 

 彼は深く息を吐き、時を止めた。

 震えがピタリと止まる。

 フロントサイトが、ソ連兵の胸板を捉えた。

 

 ――ターン。

 

 指先が動いた。

 ソ連兵が雪の上に崩れ落ちた。動かない。

 

 吐き気のようなものが込み上げてきたが、シモはそれを無理やり飲み込んだ。

 次だ。次の敵が来る。

 ボルトを引く。排莢。装填。

 シモ・ヘイヘという人間の中で、何かが壊れ、そして何かが完成した瞬間だった。

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