第13話 レンズの光
シモと敵スナイパーとの我慢比べは、すでに3時間を超えていた。
互いに相手の正確な位置は分からない。分かっているのは「この森のどこかに、自分を殺せる人間がいる」ということだけだ。
シモは、雪原のわずかな起伏に身を隠していた。
まつ毛が凍りつき、視界が狭まる。だが、瞬きは最小限に抑える。
敵はどこだ?
風向き、鳥の動き、雪の積もり方。あらゆる情報をスキャンする。
敵スナイパーも優秀だった。おそらく、彼もまたシモを探して、スコープ越しに森を舐めるように監視しているはずだ。
スコープ。
それが、勝敗を分ける鍵だった。
夕刻が迫り、西の空に太陽が傾き始めた。
射すような陽光が、雪原を茜色に染め上げる。
その瞬間だった。
400メートルほど先の木立の中で、キラリと何かが光った。
(見えた)
それは、太陽光を反射した敵のスコープのレンズだった。
相手がシモを探そうとして、わずかに身じろぎした瞬間、西日がレンズに反射したのだ。
シモに迷いはなかった。
アイアンサイトにはレンズがない。反射することもない。
彼はすでに、光った場所へ銃口を向けていた。
息を吐ききる。
指先の感覚だけを残し、世界を消す。
――ターン。
コッラの森に、乾いた音が一つだけ響いた。
敵からの撃ち返しはない。
レンズの奥にあった瞳を、シモの弾丸が貫いたのだ。
「……スコープなんて使うからだ」
シモは低く呟き、静かにその場を離れた。
勝利の余韻に浸る時間はない。銃声を聞きつけた敵の迫撃砲が、すぐに飛んでくるからだ。
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