第9話 見えざる恐怖
ソ連軍の前線基地では、異様な空気が漂っていた。
焚き火を囲んで暖を取ろうとしていた兵士たちが、次々と謎の死を遂げていたからだ。
「おい、火を消せ! 狙われるぞ!」
将校が叫ぶ。だが、極寒の中で火なしで過ごすことは、死を意味する。
兵士たちは恐怖と寒さの板挟みになっていた。
パンッ。
また一発。
今度は、タバコを吸おうと顔を上げた通信兵が倒れた。
銃声は聞こえるが、どこから撃たれたのか全く分からない。
「森だ! 森の方からだ!」
機関銃手が闇雲に森へ向かって乱射する。だが、弾丸は虚しく木の幹を削るだけだ。
シモは400メートル離れた場所で、静かに次弾を装填していた。
(今の掃射で、あそこの枝が折れたな)
敵の反撃位置を確認し、頭の中の地図に書き込む。
彼は無闇に連射しなかった。一発撃てば、場所を変えるか、あるいはじっと動かずに気配を消す。
スコープを使わない彼の狙撃は、敵にとって厄介極まりなかった。
レンズの反射光がないため、双眼鏡で探しても見つからないのだ。
この日、シモは一人で20名以上の将校と下士官を射殺した。
ソ連軍の進軍速度は目に見えて落ちた。指揮官を失った部隊は、ただの烏合の衆と化していた。
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