第十四話 盗賊の詩2ー1
硬い岩肌と湿った空気が牢の中を通り抜けていく。
日縁と爆樂丸は山禍に捕まり、彼らの拠点にとらわれていた。
「女と男を同じ牢に入れるとは……徳のない奴らじゃ」
爆樂丸は居心地悪そうに日縁と距離を取る。
「おめぇみたいな稚児、襲いやせンわ。それよりどうやってここから逃げるンだ?」
「さぁ?」
爆樂丸は、とぼけた顔の日縁を見て絶望する。
「おぉ!おりゃ馬鹿だからわかンねぇぞ!どうすンだ!」
牢を風が通り抜け、唯一灯された蝋燭の日が頼りなく揺れる。爆樂丸は手でそれを必死に守った。
「考えたのじゃが、此処はまだ甘高原じゃ。それも未だ中腹付近。櫛灘に近いかもしれんな」
得意げに語り始める日縁を訝しげに見る爆樂丸。
二人は何らかの香で気絶させられた為、ここに来るまでの道を覚えていなかった。
「何故だ?」
「いいか、この岩肌は天然の洞窟じゃ。奴らが掘ったわけではない。大仙和上の手記には霜原には天然洞窟が殆どなく、あったとしても人がぎりぎり入れる程度と書いてある。此処は明らかにそういった類の穴を掘削した人工洞窟ではない」
大仙和上。その男は日縁も憧れた偉大な宗教家であり、探検家であった。
「じゃ、じゃあ、此処は一体何処なんじゃ?」
「わからん!」
元気よく答える日縁に、爆樂丸は再び頭を抱える。
不意に、洞窟の中をカーンという軽い金属音が鳴り響いた。
その音は次第に近づいてくる。
そして、暗闇の中から溶け出てくるように一人の男が現れた。
鉄下駄を履き、筋骨隆々の小男は右手に錫杖を持っている。髪は無く、目の周りには浅い小皺が入っている。
爆樂丸と日縁は牢の孔子から距離を取った。
その様子を見て、男はからからと笑い声を上げた。
「失礼した、姫にお会いする必要があってな」
「お前は何者じゃ」
「倶利伽羅入道、大仙和上。石蹴衆の棟梁だ」
爆樂丸が小さくヒェッと声を上げるのが聞こえた。
「山伏とはいえ……何故石蹴衆に……」
日縁は呆然とし呟く。
「日縁姫、出来れば主体的に関わっていただきたい。これから、わしの義を語ります。巻き込まれた貴方にはーー選ぶ機会があるべきだ」
大仙はそう言うと蝋燭の火を灯した。
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隆景と坂下氏忠は再び地下の暗室にて会合していた。
「追跡の状況は?」
「山中にそれらしき拠点を五カ所見つけました。どの拠点も巨大な洞窟と山中に築かれた無数の砦で成り立っております」
甘高原南部から中部の中央を背骨のように貫く大山脈は、坂下家は愚か玄臣ですら完全に把握できてい無い未踏領域である。
氏忠は唇を噛み締める。
「あと、山禍と石蹴衆の連名で氏忠様に此方の要求が来ておりました」
氏忠は隆景が差し出した巻物を開き、読んだ。
「……日縁と義照様が設計した最新砲撃艦の設計図を交換しようと言っておる……」
隆景は絶句する。
そんなものを敵に渡せば坂下家は玄臣の裏切り者だ。
「どう……致しましょうか……」
「……」
巻物を握る氏忠の手は震えていた。




