第十三話 賭け
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菱刈、鉄門城。
真之は甲冑に身を包み、茶を飲んでいた。
今の所、鉄門城より手前の大崎砦で菅原の足止めに成功していた。
法の翁からの支援も届いている。
「鉄門城での生産目処が整うまでは存分に使わせていただこう」
対岸の甘高原に残した1万の兵士は陽動。法の翁所領である甘高原西北から兵糧や弾薬備蓄を菱刈島北方へ密輸していた。
「ついでに南方の坂下家に関して情報を流してみたものの……彼奴ら上手くやっているのか?」
真之が一番恐れているのは、義照が極秘裏に進めていた新型軍船が南倉島へ渡ることだった。
「あれを使われると鉄門城は終わりだ」
とは言え、現状甘高原の事を考えている余裕はあまりなかった。義照を貶める秘策を実行しようにも、現状を打開しなければ真之自身がかなり危ない状況であった。
地図を睨みながら次の手を考える。
菅原の勢力は押し留めているとはいえ、このままではかなり難しい状況ではあった。
ーーーあと二月以内に手を打たねば消耗し敗北する。
真之にとっても菅原の大軍はそれ程迄に想定外の事態であった。
不意に、襖が開き一人の男が入ってきた。
ボサボサの髪に顎髭は整っておらず、浮浪者の様な見てくれをしている。
真之は横目でちらりと彼を見た。
「どうなった?」
その男は着物の中から一通の書状を取り出した。
その書状、見るからに品質のいい紙と竹で作られた巻物の留め具には、隼の紋様が彫り込まれていた。
真之はそれを見て目を見開く。
「南方王国、隼の王より。菅原東西挟撃に関しましての協力を了承した。との事です。詳しい条件につきましてご確認ください」
男は漆で塗られたお盆の上に巻物を置き退出する。
男が去った後、しばしの沈黙が落ちた。
真之は巻物に手を置いたまま、動かなかった。
隼の王。
菅原東西挟撃への協力。
それは確かに、盤面を動かし得る一手だった。
だが同時に――
玄臣の後継争いに対しての介入理由を南方王国に与えるという事でもある。
「……代償は、安くはあるまいな」
ーーーだが、これで……勝機が生まれた。
頭の奥が脈打つような感覚に襲われる。
視線を地図へ戻す。
菅原、義照、そして南方。
もはや誰一人、味方とは言えぬ。
それでも構わない。
盤上に立つ以上、利用し、されるのは定めだ。
「父上」
小さく呟く。
「玄臣の為に、私は時代を進めます」
ーーーーーーーーーー
将大と平群、そしてジェインは裏町を見下ろす部屋で茶を嗜んでいた。
「うわははは!」
平群は怪訝な目で将大を見る。
「何か面白いことが書いてあるのか?」
「兄上からつぎ隠し事をすれば切腹だと」
平群は思わず茶椀を落とす。
ジェインは静かで、何も言わない。
「あと、どうやら小笠原公方様からオレニアとの交渉に当たって一筆頂けるとのことだ」
「なんでそんな事に……」
平群はあんぐりと口を開けた。
「くぼう……」
ジェインがぽつりと呟いた。
「そうだ、お主を買おうとしていた公方だ」
ジェインは親から複数国の言語を教わっていた様で、意外にもある程度の単語を理解する事ができた。
「さぁ、鉄交渉は大詰めだな。我等を助けてくれれば必ず約束は果たす」
将大の大袈裟な身振り手振りとゆっくりと発音された音を聞いて、ジェインは意味を理解したのか頷く。
平群は呆れた様に笑った。
「いこうか、白鬼共の島へ」
三人は茶椀をカチンと当てた。
地理関係的にはこんな感じです。
菱刈 甘高原
南倉
南の王国 白鬼島 霜原




