不倫の代償
バレない、バレない。バレるわけが無い。
されない、されない。咎められるワケがない。
君が好きだっていうから、関係を持った。
僕が来月結婚するコトを知りながら、君は関係を迫った。
僕は悪くない、僕は悪くない。
悪いのは、僕と君の関係を暴こうとする奴。
僕と君の関係を否定する奴。
不誠実な愛だと咎める輩に、なにがわかる?
偶々逢うのが、遅かっただけなのにさ?
婚約者と結婚しなかったら、世間体的に印象が悪いから、愛がとっくに冷めた女と、家庭を築いただけ。
自分がその立場に立ったら、解るコトなのに…。
僕を責める理由が欲しいから、理解しようとしない奴が多い。
君との関係は、沢山の壁が立ちはだかる。
妻に怪しまれない様に…周りから怪しまれない様に…慎重に、行動を慎んで。
何度、死ぬんじゃないか?と思うぐらいに、心臓の動きが早くなっていったんだよ。
だけど、そんな刺激が心地好くて、君との仲を、より深めたね?
バレない、バレない。バレるわけが無い。
されない、されない。咎められるワケがない。
……そう、思っていたんだ。
僕達の関係は、ある日突然、みんなの知る処となった。
世間は、僕達の愛を許してくれてないのか、余所余所しい態度を、取ってくる様になった。
みんな、僕達に、冷たい視線を送る。
関わり合いになりたくないという態度が露骨なクセに、話し掛けたら普通の対応で、どう接していけばイイのか困り、精神的に参る。
……だからだろう。
君への愛が、冷めていったのは。
僕は只、“楽しい恋愛ごっこ”をしていれば好かった。
なのに、自分達の関係が公になると、彼の本命は自分だと言い張る君に、熱が冷めていくのを感じた。
僕は結婚しているから、世間体的に、本命は妻にしとかなきゃマズイ。
なのに君は、僕の立場を考えずに、自分の願望を、世間に伝えていたね?
バレない、バレない。バレるわけが無い。
されない、されない。咎められるワケがない。
妻がいるとわかってて不倫した女は、世間からのイメージが悪い。
そんな人物が突然失踪したとしても、気に留める者は数知れず…だろう。
僕には、将来がある。
だから此処で、社会的な立場が壊されるのは、マズイのだ。
たかだか一人の愛人に、其処まで人生を捧げるつもりはない。
そもそも、僕に恋人がいるのを知ってて、関係を迫ってきた君が悪いんだろ? 結婚以降も、関係を続けたいと、何度も誘惑してきたのは君だったしね?
僕は、お前に騙されたのだから、寧ろ被害者じゃないのか?
「貴方と私は同罪」
「!」
声がした方へ振り返るが、其処には誰もいない。
当たり前だ。今から遺体を埋めるのだから、後々の事を考えて、一人で頑張ろうとしているのだから。
……そういえば。先程聞こえた声、彼女に似ていた気がするが…まさか、な?




