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仁以千絵君へ 一九九二年一二月四日
仁以千絵君はきっとあたまが良すぎるんですね。ところでぼくは今日こうえんで友達とソフトをもち合ってゲームボーイをしてたら、目の前をすごくきれいな、なんというかすきとおるような白いおねえさんがとおったんだ。ぼくとその友達、名前は洋平って言うんだけれど―は見とれてしまって、そのおねえさんがこっちを見るまで口がきけないくらいだったんだ。そしたらおねえさんは、ぼくにむかって「えきはどっちかしら。」ってきいてきたんだ。ぼくはうれしくなっちゃって、向こうからこうえんを出て、左へ行って、大どおりに出たら右ですってせつめいしたんだ。洋平のやつじゃなくってぼくにきいてきたんだ!おねえさんが「ありがとう」と花がさくみたいに(ぼくにだってことばのせかいはあるんだ!)わらって行っちゃったら、ぼくたちはゲームなんてほうり出しておねえさんのことばっかりはなしてたよ。洋平は「おれもあのきれいな人とはなしたかった」ってくやしがってたよ。でも洋平はぼくのしんゆうだ。
圭太より