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圭太くんへ                         一九九二年七月二一日

ぼくはとうきょうにすんでいるけれども、ディズニーランドはおかねがかかるからいっかいしかいったことはないです。そのときは、おとうさんがかってにひとりでどこかへきえてしまって、おかあさんがおとうさんをさがしているのに、おとうさんがひとりでのりものにのっていたから、おかあさんがおこってたいへんでした。おとうさんはへらへらわらっていました。ぼくはおとうさんがわるいけれど、ずーっとおこっているおかあさんもしつこくていやでした。だからこのひのディズニーランドはあまりたのしくなかったです。おかあさんはいつだってじぶんがいちばんただしいとおもっているふしがあります。そういういみのことばがあったきがするのですが、ぼくにはむずかしすぎることばでわすれてしまいました。あんまりしたしくないことばはわすれてしまいます。ぼくはまだようちえんじだから。おともだちはぼくをばかにするからきらいです。でもいじめられているとはぼくはいいません。そのことばはなにかなさけなくてくやしいきもちになります。きのうおともだちのせいいちくんがぼくのいえにきて、ポケットにはいるくらいのちいさなみどりのへいたいのにんぎょうを、ぼくのほんだなのうえからぬすみました。ぼくがそれにきづいて、せいいちくんにいうと、せいいちくんはこれはもともとせいいちくんのもので、ぼくのほんだなのうえにあったにんぎょうは、いっしょにきていたゆきとくんがぬすんでいたのをみたといいました。ぼくは「うそつかないで」といいそうになりました。でも、ぼくじゃなくてせいいちくんがわるいのにどうしてぼくがおねがいするかたちをとらなきゃいけないのかふしぎにおもったので、そのことばはいいませんでした。あとから、「うそつくな」とか「うそつけ」とかいえばよかったのだとおもいました。それなら「めいれい」とかにきこえます。せいいちくんはつぎのひニヤニヤしながらひつようのないうそをぼくにつきました。きっとぼくはどんなうそでもしんじるとおもったのでしょう。でもしんじるしんじないはかんけいなくて、さからうか、いうことをきくかが、せいいちくんにはだいじなんだとおもいます。きっとにんげんはみんなそうなんだとおもいます。ようちえんにはすきなともだちもせんせいもいません。せんせいはぼくのようにすみでほんばかりよんでいるこどもはかわいくないとおもっているみたいです。だからぼくのほうもせんせいをけぎらいすることにしています。おとうさんとおかあさんもきらいだけれど、ぼくはこのふたりのはなすことばから、じぶんのきもちをあらわすことばをまなべます。

                                  仁以千絵より



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