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妄想注釈物語  作者:
11/11

シェイクスピアが『文鏡秘府論』に注釈してみた件

空海の音韻・象徴・比興に対して、

シェイクスピアが演劇と詩の言語で応答する。

※これは夢か幻か、月明かりの下、グローブ座の楽屋で

なぜか空海の写本を手にしたウィルことシェイクスピア卿が、

王妃オフィーリアの台詞を待ちながら書き留めた断片とされる。



第一条:文は鏡なり、言は秘府なり

“The word is a mirror in which the world sees its mask—

and the vault of speech is a secret chamber

where the soul is costumed before her cue.”


シェイクスピア曰く:


鏡が真実を映すとは限らぬ。

舞台においては、虚構こそが本質を告げるのだ。

ならば「文」は偽りの仮面か?否――それは真実の仮面である。

空海翁よ、汝の言う「秘府」とは、

我らが台詞回しの奥に棲む魂の小劇場に他ならぬ。



第二条:比興をもって、実義を蔽う

“Metaphor is the mischief of meaning—

a jest by which Truth comes clad in jester’s bells.”


シェイクスピア曰く:


真実は道化の姿を借りてしか現れぬ。

王の口からは出ぬが、道化は天の言葉を言う。

比興とは、狂気という名の理性であり、秘事という名の啓示である。

そもそも「たとえ」でしか語れぬのが神の言葉というものではないか?



第三条:詞の音にして、義は象にして、心は声に従う

“Let the sound be the breath of sense,

and sense the ghost in the actor’s chest.”


シェイクスピア曰く:


音なくして意味は通わず。だが意味のみでも心は動かぬ。

言葉は楽器であり、語り手の呼吸こそが魂を呼ぶ。

役者が「わたしは王なり」と言えば、それが事実となる。

ならば「詞」は法であり、詩人は創世の証人となる。



第四条:詞を以て聖を描き、色を以て俗を隠す

“We cloak the sacred in the theatre of the profane.”


シェイクスピア曰く:


台詞は卑俗な言葉を用いて、神の影を召喚する。

オセロが嫉妬に燃えるとき、舞台の下では神が心の業を測っている。

色と俗こそが、聖を隠し、かえって聖を光らせる布地となる。

空海翁よ、貴殿が「絵と文と声」を結びしがごとく、

我らもまた「芝居と言葉と沈黙」によって神を紡ぐのだ。



第五条:詞の魔は心の魔、筆の迷は魂の迷

“The curse of the pen is the curse of the penitent.

What we write may haunt us—unless we write in prayer.”


シェイクスピア曰く:


書くことは祈ること。されど祈らずして書けば、

それは呪いの種となる。空海翁の言う「詞の魔」とは、

我がマクベスが手を汚したときに覚えた言葉の背徳と同じ。

だからこそ、言葉に魂を乗せるなら、その源を問うべし。

言葉の背後に神なきとき、それは毒の短剣となる。



第六条(未完):筆にて星を写し、声にて天を召す

“When I do write, methinks I bind the heavens

with poor ink and mortal breath.”


シェイクスピア曰く:


それでも我は書かねばならぬ。

なぜなら言葉がなければ、天も地も役を演じぬからだ。

空海翁が語ったように、詩も説法も、神を召す名乗りの声である。

舞台に立つ者の一言が、この世の星々を位置づけるのだ。



あとがき:ウィル曰く

“空海よ、おぬし、まさしく我が兄弟なり。

言葉を以て宇宙を創り、また沈黙を以て神を召す者よ。

そなたがもしロンドンにおれば、我が舞台にて即座に主演ぞ。

…いや、そなたこそ舞台そのものであろうか。”

イメージソング。

Massive Attack「Unfinished Sympathy」。

https://youtu.be/JuA-YPatiHU?si=a823ynL6cEEIhm15

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