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第10話 いざ修行

 朝食を食べ、春の陽気が暖かい外へと繰り出す。チャチェの修行が始まるのである。動きやすい格好で庭に出た二人は向き合うように立っている。


「さて、では修行を始めましょうか」


 ファルメルは、ぽんっと手のひらを打ち合わせ提案する。それに対してチャチェは緊張と期待をはらんだ表情で、発表される修行がどんなものかと、待ち構えている。


「最初の修行はマナの抑制です。魔封じのブレスレットを外し、自分の力でマナを十分の一になるよう押さえ込んでください」


「封じ込めるのは、どうしたらいいの?」


「今から説明しますね。ブレスレットを外したら、勢いよくマナが蒸気のように立ち上るでしょう。それを無理に中に押し込めるのではなく、マナが血液のように血管を通って体の中に循環するのをイメージするのです。体を一周回ったら、最終的にはお腹、丹田(たんでん)に集まるようイメージしてください」


「わかった」


 チャチェは緊張した面持ちでブレスレットに手をかける。ふぅ、と一息ついて覚悟を決めたようにブレスレットを外した。すると、チャチェの体からマナが間欠泉が爆発した時のように、勢いよく放出される。


あまりの勢いに一瞬怯むが、すぐにファルメルの助言を思い出し、マナが体を巡回するイメージをする。手から肩、胴体を巡り脚へ、さらに巡りまた胴体に行き、胸から丹田へ。そのイメージをなん度も繰り返す。


「これは、素晴らしい」


 チャチェの中にマナが集約されていくのを見て、ファルメルは感嘆の声を漏らす。この子は天才だ、と確信したのである。マナの制御にはイメージが必要ながら、自然体が最もマナを制御するのに適していると、教えられずに理解している。初めてでそれらを難なくやってのけたこの子が、ファルメルは誇らしくもおそろしいと思った。


「これで……成功なのかな」


「えぇ、成功ですよ。素晴らしい出来です」


「これで、今日の修行は終わり?」


「いいえ、イメージを掴んだことでマナを丹田に貯めることは叶いましたが、自分から出ているマナをご覧なさい。大きく揺れているでしょう? できるだけ、それを揺らさないように頑張ってみてください」


「どうすればいいの?」


「言葉で理解しては返って重荷になってしまうでしょう。自分で探ってみてください。今日は始まったばかりですから、時間はたっぷりありますよ」


 なるほど、とチャチェは納得した。自分がマナを丹田に貯めた時のことを思い出して、何かヒントはないか考えていると。ファルメルに左手を出してください。と言われ、素直に左手を出す。


「これは誓いの指輪。気が緩みそうになったらこれを見て、気を引き締めてくださいね」


 そう言うと、ファルメルは赤い革紐のような物をチャチェの小指に結びつけた。


「では、私は家の周囲に結界をはありますので、これで失礼しますよ。私が返ってくるまで、マナを十分の一に保っておいてくださいね」


「うん、分かった。いってらっしゃい」


 ファルメルは再びマナの制御に集中するチャチェを見届けると、修行を始める前に用意しておいた荷物と杖を手に取り『空を飛ぶ魔法』で木々の上を移動する。広範囲の長期的な結界を張りに行くのだ。


 これはチャチェが魔法を学びたいと、自分のもとに滞在するといった時から決めていたこと。とは言ったものの、結界を張るために用意した結界石(けっかいせき)の杭はこのために一から作ったものではなく、元々自分が実験をする時のために、作っておいた物である。


 チャチェがこの地に降り立ったのが急であったことと、あれほどの総量のマナを抑えておくには、魔道具にも、いちいち手動で張る結界にも限界があるため、出来るだけ早く長期的に固定できる結界を張る必要があったのだ。


「このくらいでいいですかね」


 そう言うと、ファルメルは生い茂る木々の間を縫って地面に降り立つ。ガサガサと荷物の中から杭を取り出すと、目にマナを集め、地面を見渡した。地脈を探っているのだ。


地脈とはマナの流れる川のようなもので、地中に網を張るように広がっている。その地脈に杭を打ち込む事で、結界石にマナを送り込まずとも、結界が作動し続けるようにしようとしているのだ。


 ファメルが狙いを定めて、杭を地面に刺し、杭の頭を杖でトン、と触れた。すると、杭はみるみるうちに地面に沈んでいき、全く見えなくなってしまった。


「さて、次に行きますか」


 ファルメルは荷物をまとめ、次の杭を打つ場所へ向かう。合計六本の杭で家から約半径二キロメートルの結界を張る予定である。


 ファルメルが結界を張り終え、家の庭へと戻ると、今朝と全く同じ場所で瞑想をしているチャチェに出会す(でくわす)。マナは少し揺らいでいるが、体の周りを纏うように流れ、頭の上から一本の煙の様に天へと昇っている。とてもいい状態でマナを制御するチャチェに、今朝感じた才能は間違っていなかったと頷く。


「チャチェ、お疲れさまです。よくマナの制御を心得ましたね」


「あれ、ファルメル。もうそんな時間? いつの間にそんなに経ったんだろう」


 突然話しかけられたにも関わらず、チャチェなマナは瞑想をしていた時と変わらず、少し揺らぐ程度にとどまっている。


「もう、意識しなくとんもマナを抑えることは出来そうですか?」


「うん、かなり自然体で制御できる様になったよ。多分一日中このままでいられる」


「素晴らしい。私が席を外していた間も、制御を怠らなかった様ですし、今日の修行はお終いですね」


「なんで僕がサボらなかったってわかるの?」


「誓いの指輪が切れていないからですよ」


 左手を見てみてください。とファルメルに言われ、チャチェはその通りにする。すると、今朝つけていた革紐が変わらず小指に巻き付いていた。


「この誓いの指輪は、マナが一定量以上、放出されると切れるように魔法をかけておきました。それが切られていないと言うことは、約束は守られていると言うことなのですよ」


「ふーん、そうなんだ」


「さ、修行も終わりましたし夕飯にしましょう」


 パンパン!と手を鳴らし気持ちを切り替える。チャチェもファルメルも昼食を摂っていないため、お腹はペコペコである。


「今日はチャチェも夕飯作りを手伝ってもらえますか?」


「いいよ、何をすればいい?」


「それはキッチンに行ってから話しましょうか。まずお互い手を洗いましょう」


 そうして二人は家へ入って行った。

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