質問6 目に見えないものは存在しますか?
「目に見えない世界?それって天国とか地獄の話ですか?
それとも異世界に転生して剣と魔法で冒険するやつ?」
―そういうのも、人間さんの妄想力が生み出した世界ではあるわね。それらの存在はまだ確認されていないけど。学問の世界では実証されなくても理論上で役立っているものや、予言されてからしばらくして実在すると確かめられたものが沢山あるわ。
例えば、数学の自然数は現実で見つかるけど、負の数や複素数は想像の産物でしょ?
「そういえば、そうですね。1、2、3という正の数は指を折って数えられるけど、マイナスの数ってどこで見つけたんだろう?物が減ることから思いついたと考えれば納得できるけど、複素数なんて地球上のどこを探したって出てこないよね・・・」
―人間さんは、既存の情報からその延長線上を類推するのが得意なの。数学者は一見ランダムに見える数列に規則性を見出し、数式で記述できる法則を作り出した。物理学者は理論に基づいて実験を行い、その法則が正しいかを確かめた。宗教家が大自然の雄大さから神仏や悪魔を作り出したように、学者達は宇宙の見えない部分を補完して、銀河のどこでも通じる万物の理論を作り上げたの。
「見えない部分って、例えばどんなものを見つけたんですか?」
―元素なら当時未発見だったガリウムやゲルマニウム。素粒子ならニュートリノやヒッグス粒子。かの有名な『一つの石』はブラックホールの存在を予言していたわね。数えればきりがないけど、どれも理論的に存在が予言されて、その後の研究で証明されたわ。人間さんの五感で得られる情報は宇宙全体の物質やエネルギーからすればほんのわずかな割合なのに、その想像力と測定技術の進歩によってどんどん知見を広げていってしまうわ。
「見たものを分類するだけじゃなくて、まだ見えていないものも理論的に導き出せるのか。科学者って改めて考えるとすごい人達なんだな」
―118種類の元素を集めて穴だらけだった周期表をほぼ完成させた人間さんは、さらに原子より小さな素粒子のリストを作り始めたわ。いずれ宇宙の全てを網羅するまで、好奇心旺盛な人間さんの探究は止まらないでしょう。
宇宙が膨張し続けるように、人間さんの想像力と探究心はこの星河をどんどん押し広げていく。もっと研究が進んで三次元の先へ手を広げていけば、いずれ霊界や魔界、並行宇宙の謎も解き明かして、若い人間さんが大好きな異世界に旅立つ日も来るかもしれないわね。
羽神さんは口癖のように人間さん人間さんと言ってますが、そこには二つの意味があったりします