質問2 この宇宙はどうやって生まれたんですか?
「羽神さんの言う通り、この宇宙の全てが波というなら、宇宙はどうやって生まれたんですか?漫画に出てくるような全知全能の神様がいて、ものすごい力を使って創造したんですか?」
―全知全能の神様というのは、多分いないわね。因果関係を無視して事象を自由に操作できる存在がいるとしたら、物理法則が崩壊してしまうもの。
竜の神様が願いを叶えてくれるのは、フィクションの世界だけよ。この現実の宇宙はね、何もない小さな点から始まったのよ。
「・・・小さな点?」
―人間さんはインフレーションやビッグバンという理論をご存じかしら?上空から水面に小石を落とすと、落ちた場所に一瞬だけ穴が空いて、そこから波紋が発生して広がっていくでしょう?それと同じ。より高次元な世界から来たエネルギーが虚無の世界に波を起こし、空間を急激に押し広げて今の宇宙を作ったの。
「ビッグバンって、聞いたことありますね。宇宙が大爆発して星の材料を作ったんでしたっけ?」
―だいたいその解釈で合ってるわ。巨大な波の力は未開拓な暗黒空間を整地して光の通れる通路を作った。その波の一部が凝縮して何度も核反応と化学反応を繰り返し、今宇宙に存在する物質に成った。
その物質で恒星や惑星が形作られる一方で、残った大半のエネルギーは今もなお宇宙を膨張させ続けているわ。
「え、宇宙はまだ大きくなっているんですか!?」
―そうよ、一度始まった膨張は止まるどころか、坂道を転げ落ちるように加速しているわ。いずれ空間が限界を迎えて破裂するか、力尽きて収縮に転じるまで拡散を続けるでしょうね」
「それはすごいなぁ。宇宙の果てがどうなっているか、見ることはできますか?」
―残念だけど、それは無理ね。この宇宙は光よりも速く膨張しているから。
人間さんが計測に使う電磁波が光の速度を超えることはないので、いくら大きな望遠鏡を作っても宇宙の端には永遠に届かないわ」