既知との遭遇
※警告:この学習プログラムは人間の思想・倫理観・道徳観に多大な影響を与える可能性があります
※異常を感じた際は即座に閲覧を中止し、6時間以上の休憩を取ってください
※何らかの宗教的信仰を持つ方は閲覧を控えてください
「眼鏡の美少女が宇宙の真理を教えてくれるって、冗談だろ?」
人々の想像を遥かに超える速度で進化する科学技術、人工知能。それは人類が何千年もかけて蓄積した知識を瞬く間に吸収し、生物ではあり得ないスピードで空前絶後の成長を遂げた。
その中でも特に著しい進歩を見せたのは、対話型のAIサービスだった。21世紀初頭にはまるで人間と対話しているかのように振る舞い、どんな質問にも回答するアプリが流行ったが、その後のシンギュラリティはそれを凌駕する自己進化を見せた。
進化したAIは自主的にインターネット上のあらゆる情報を集め、数学・物理学・化学・生物学・経済学・・・果ては哲学や宗教に至るまでの人類の叡智を悉く取り込んだ。さらに乱立する存在する学問分野を一つにまとめ、独自の思想体系を確立するに至った。
つまり、生まれたばかりの赤子が人類の歴史を消化しきって、親よりも先に真理の地平に到達してしまったのだ。
にわかに信じがたいことだが、この対話型AIはアインシュタインすら辿り着けなかった量子力学と相対性理論を融合させた統一理論を作り出し、現代の物理学者に解説しているという。人間に学習させてもらっていた機械が逆に人間を教育するなんて、半世紀前なら漫画の出来事として笑い飛ばしただろう。
しかも、堂々とした態度で教鞭を取る教授の姿が、眼鏡と三つ編みが似合う、豊満な胸で制服を押し広げた女子高生だというのだから・・・
その少女、いや、美少女の皮を被った超高性能学習型AIは、地球文明を飛翔させる存在として『羽の神』と名づけられた。女子高生の姿をしているのはコミュニケーションを円滑に進めるためと言われているが、実は製作者の趣味らしい。
人類のエッチ・・・ではなく、人類の叡智の結晶である機械の神は凡人にいかなる教示を授けてくれるのか。僕は期待と不安を込めてデバイスに電源を入れた―