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第5話 7月14日雄騎編

ぐだってます

昼休み

「ふ~、食った食った。」

俺は屋上で皆と昼食を食べたあと満足感と満腹感に浸っていた。

そして、食べ終わって5分後くらいに杏が

「そろそろ行くか?」

と切り出した。

それに従い皆教室に向かっていった。

教室に向かう途中俺は奏に手紙を渡し午後の授業を受けた。

手紙と言ってもただノートを破り、折り畳んだだけだが

手紙の内容はこうだ。

「今日の放課後誰にも気づかれずに屋上に来て下さい。 雄騎」

午後の授業を終えてすぐに屋上に向かった。

そして奏が来るのを下校している生徒たちを見下げながら待っていた。

下校している生徒たちの中に建太たちを見つけた。杏と秋季と3人で下校している。

下を見ているとだんだんと下校している生徒がまばらになってきた。

野球部も準備体操を済ませ練習を始め出していた。

硬球のボールを金属バットで叩く『カキーン』といういい音が聞こえてくる。

しばらく待っていると吹奏楽部のトランペットの音が聞こえてきた。

奏を待っている時間はものすごく長く感じる。

俺は携帯で時間を確認した。すると携帯の時計は16時52分を差していた。

もう1時間以上経っていた。どうりで長く感じるわけだ。

「奏、ちゃんと手紙見てくれたよな?」と考えながらひたすら待ち続けた。



空を見上げながら待っていると、野球部のバットでボールを打つカキーンという音から、バットでボールを打った数秒後に『バシッ』というグローブにボールが入る音に変わっていた。

どうやらバッティング練習から守備練習に変わったようだ。

だが、そんなことはどうでもいい、今は奏が優先だ。

遅い、遅すぎる、既に時刻は18時2分だ。2時間以上経過している。

何かあったのか?

でも何が?

学校内で何がある?

なら手紙に誰にも気づかれずにって書いてたから全員下校してから来るつもりか?

いや、違う。奏はそんなバカなことはしない。

ならもしかして忘れてるのか?

でも渡したのは昼休みだ。たった2時間で忘れるか?

いや、奏はそんなに記憶力は悪くない、むしろ良い方だ。

だが待てよ、

手紙を読んだあとそれと同等かそれ以上の何かが起きてそっちに気をとられていたら?

または小さいけど複数の情報によって手紙のことが記憶から薄れていったとしたら?

……いや、さすがにたった2時間でそんなに大きなこと、または小さいことが大量に起こるなんて考えにくい。

……そもそも何かって何だ?

まさか手紙を読んでいない?

いや、さすがに家に着いたら気づくだろう…



なぜそう思った?

なぜ気づくと思った?

これは気づいていないだろ、奏の家は学校から徒歩で約40分位だ。

往復約1時間20分、2時間も掛からない。なら捨てられたか?

いや、それはない、奏が人から貰ったものを捨てるわけがない。

なら無くしたか?

だがそれなら用件を聞きに来るはずだ。俺が直接渡したんだから。

ならどうしてこない?


俺がそんなふうに考えていたら、屋上の扉が開かれた。

「はぁ、はぁ、ごめんなさい、雄騎君、はぁ、はぁ、」

奏が息を切らせながら走ってきた。

「私、はぁ、家に着いてから手紙を読んで、はぁ、はぁ、走ってきたんですが、はぁ、待ち、ましたよね?」

奏が申し訳なさそうに言ってきた。

俺はとりあえず奏に息を整えるよう言い、屋上にある自動販売機でイチゴミルクを買い奏に渡した。

奏は俺に礼を言いながらイチゴミルクを飲み始めた。

5分後

奏がイチゴミルクを飲み終えたところで俺が

「そろそろ本題に入っていいか?」と聞いた。

奏は「はい」と答えてくれた。

「阿沙陽 奏さん、昔から貴女の事が好きでした。俺と付き合ってください。」

俺は、奏に告白した。

それに対し奏はこう答えた。

「二 雄騎さん、私も貴方の事がずっと大好きでした。こんな私で良ければ是非お付き合いして下さい。」

奏が俺の告白をOKしてくれた。

そこに

「お前等、部活やってない奴は早く帰れ!」

と言いながら殿下が現れた。

殿下に言われ、俺たちは帰ることにした。

俺が屋上から帰ろうとしたとき、殿下が耳打ちで「よかったな」と言ってくれた。もしかして待っててくれたのか?


帰り道


「すみませんでした。私が授業中に手紙を読んでいたらこんなに遅くはならずにすみましたのに」

「大丈夫、全然気にしてないから、でも何で2時間も掛かったんだ?」

「実は、殿下先生に用事を頼まれまして…」

「そっか、なら仕方ないな」



そして少し沈黙が続いた。

その後、俺は奏に前からずっと気になってた事があったので聞いてみた。

「奏、間違ってたらスマン」

俺は前もって謝罪をした。

「はい?」

「奏って実はちょっと無理してるだろ」

「え?な、何がですか?」

奏が立ち止まって聞き直してきた。

「その丁寧な口調だよ、何となくだけど俺には無理してるように感じるんだよ」

少し沈黙し、空を見上げた。

「……そっか、バレちゃったか、でも最初に気づいたのが雄騎で良かったよ」

やっぱり、奏は子供の頃と同じ口調を演じていたんだ。

「やっぱり、か…何で今までそんな演技してたんだ?」

俺は奏に聞き直した。

「だって…、今さら変えられないよ…」

奏は少し声のトーンを下げて答えた。

「何で?今からでも遅くないだろ」

「だめだよ…今さら…」

この時、奏の声が少し震えていた。が、この時の俺は熱く成りすぎていてそれに気づけなかった。

「今さらって何?全然いけるって!」

そう言い終わった後、奏は涙を流しながら叫んだ。

「無理だよ!だって私、ずっと同じキャラで今まで来たんだよ?今変えたら、また一人ぼっちになっちゃう!」

そうか、奏は怖いんだ。

今の関係が、今の俺たち、建太や杏たちとの関係が壊れるのが怖いんだ。

俺たちに出会う前の、一人ぼっちだったあの頃に戻るのが……

「大丈夫だよ、建太も杏もきっと秋季だって、キャラなんて気にしないよ」

「でもっ!」

俺は奏を抱き締めながら続けた。

「大丈夫!…大丈夫、心配しなくてもあいつらはキャラなんかで人を判断するような奴らじゃない。奏だって解ってるだろ?」

そう奏に言い聞かせた。

「それに、どんなキャラでも奏は奏だろ?俺はどっちの奏も大好きだ!」

奏も泣きながら続けた。

「雄騎ぃ、雄騎ぃ、本当は私も杏みたいに皆を呼び捨てで呼びたかったよぉ、君やちゃんなんて他人行儀な呼び方したくなかったよぉ」




そして、奏も泣き止み奏の家の前に到着した。

「ごめんね雄騎、急に…」

「ううん、俺は気にしてないよ、それより、明日建太たちにも本当の奏を見せてやろ?」

と奏を煽ってみた。

「うん、私、頑張ってみる」

それに奏は賛同した。

「それじゃあ奏、また明日」

「うん、また明日、学校で!」

こうして俺は帰路にたった。

「雄騎ぃー」

俺が歩いていると奏に呼び止められた。

「雄騎、だぁいすき!」

そう言って部屋に入っていった。

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