第15話 記憶1
なぜだろう
ネタはあるのに全然書けない…
と考えていたら
それは時間がないからだ。
という答えに達したスリ師キャンドルです。
そんなことは置いといて、本編どうぞ
「…くん……建太くん」
誰だ?俺の名前を呼ぶのは?
「早く起きなよ建太くん」
俺はその声に応えるように目を覚ました。
「やっと起きた」
俺が目を覚ますとそこにはポニーテールの女の子がいた。
「夏耶?」
彼女は山乃邊夏耶、俺が小学生の頃、一番よく遊んでいた友達だ。
「建太くん、早く行こ?」
どこに?
「どこって、決まってるじゃない?」
決まってる?
…ちょっと待てよ、この景色どこかで見たような気が…。
「もしかして本当に忘れたの?」
いや、待て。
…思い出した。
「やっと思い出した?」これは俺が小学生の頃、夏耶と2人で過ごしてた時と同じだ。ということは、今から行くのは…。
「建太くん、準備できた?」
「おお、今行く」
夏耶に呼ばれ、荷物を持って家を出た。
外に出ると夏耶が待っていた。
夏耶は「早く行こ」と言い手を差し伸べてきた。
俺はその手を取り、夏耶と肩を並べ歩きだした。
まず、俺たちは駅へ行き、切符を2枚購入した。
ちなみに2枚とも子供料金だ。
準備していた時に気付いたのだが、どうやら今の俺は小学生の頃の体型になってしまっているようだ。
そして、電車に乗って海までやって来た。
今は夏休みの真最中なので、浜辺や海の家などは海水浴に来た人で賑わっていた。しかし、俺たちの目的地はここではない。俺たちの目的地は秘密基地だ。
実は、この浜辺には少し離れた所に離れ小島が有る、そこを俺たちの秘密基地にしている。
そして、その離れ小島には誰も人が立ち寄らない。と言うか立ち寄れない。
なぜ、頑張れば泳いでも渡れる位の距離の小島に誰も立ち寄らないかと言うと、実はその島の周囲50m付近の潮の流れが異様に速いためだ。
泳ぐのはもちろん、船を出しても潮に流されるほどの激流が流れている。
なのでいまは無人島になっている。
ならば、俺たちはどうやって島に行くかと言うと、この浜辺に岩場のエリアが有り、そこに秘密の洞窟がある。その洞窟を抜けると島に行けるようになっている。
「建太くん、懐中電灯貸して」
俺たちは早速、洞窟の中へ入っていった。
もちろん誰にも見つからないように
洞窟の中は、入口付近は狭いが、少し奥へ行くとかなり広い空間に出る。
この辺りからは2人並んで歩ける。
しばらくすると、道が右、左、まっすぐの3つに分かれていた。
しかし、俺たちは迷うことなく、まっすぐ進んでいった。
その後も、何度か分かれ道が有ったが、全てまっすぐ進んでいった。
そして、10分程歩いていると、再び道が狭くなってきた。
もうすぐ到着する。俺たちの秘密基地、ドリームアイランドに。
洞窟を抜けると青々と茂る木々が目の前に広がった。この辺りは小さな森になっている。
森を抜け、浜に出るとさっきまで俺たちがいた浜辺が遠くに見えた。
「じゃあ、泳ごっか」
夏耶に誘われ、俺たちは泳ぎ始めた。
しばらく波に揺られていると「競争しよっか」と夏耶が言ってきた。
俺たちはこの島に来る度に競争していた。
俺と夏耶の戦績は大体五分五分だ、そして、俺の記憶が正しければ、今回勝つのは俺だ。ただ、そこまでは思い出せるが、その後が思い出せない。そんなモヤモヤを抱えたまま、レースを開始した。
このレースのルールは、砂浜に木の枝を突き立てて、沖から砂浜に向かって泳ぎ、木の枝を取った方が勝ちだ。沖と言っても砂浜までの距離は20m程だが…。
俺たちはスタート地点に向かった、到着すると、2人同時に「よーい、スタート」と掛け声をかけスタートした。
俺は全力で泳だ、夏耶も全力で泳いでいる。差は拡がらない。15m位泳ぐと、砂浜に足がつく、ここまで来ると後は走るスピードの勝負になる。
俺は泳いでいる体勢から上手く走る体勢に切り替えることが出来たが、夏耶は少しもたついてしまった。その一瞬の差で、俺は夏耶に勝った。
「あ~あ、負けちゃった。今回は建太くんの勝ちか」
と言っていたが、余り悔しそうでも無かった。
泳ぎ終わった後、俺たちはそろそろ帰ることにした。
荷物を片付けて、最後に貝殻を1つ拾って帰った。これはこの島に来たら毎回やっていることだ。俺たちは、ここへ来た時に使った洞窟を通って帰ってきた。
こちらの浜はまだ、海水浴の人達で賑わっていた。
俺たちはその光景を横目に見ながら駅へ向かった。
駅に着くと切符を買い、電車に乗って自宅のある駅に向かった。
駅に着くと、俺たちはそのまま帰路についた。
「今回は負けたけど、次は私が勝つからね」
「いや、次も俺が勝つ」
「お、言ったな~」
などと、他愛の無い話をしていたその時、曲がり角の死角から車が飛び出してきた。
キキィー、ドンという音と共に、夏耶の身体が宙に舞った。
宙を舞う夏耶の身体はすごい勢いで地面に叩きつけられた。
「夏耶…、夏耶起きろよ!」
俺は夏耶のもとへ駆け寄り、身体を揺すり声を掛けた。
しかし、夏耶はピクリとも動かない、それどころか、心音は弱くなり、呼吸は止まり、頭からは大量の血が流れだし、地面に溜まっていた。
「夏耶ーーー!!!」
この5分後、救急車とパトカーのサイレンの音がこの周囲一帯に鳴り響いた。
次回は10日後です。