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8話

「おお、これが異世界の町か。案外悪くねぇじゃん。もっと、早く来てりゃよかったな」


 町の大通りのど真ん中へ移動してきた俺は、ひとまず周囲の状況を確認した。

 この町だが、現代よりも文明レベルが幾分か低いものだ。それだけは軽く見た感じでもわかる。ざっとどれくらいだろうか、江戸時代よりは上だと思うな。江戸時代知らんから、適当だけど。


「おい、あの人突然現れなかったか?」


「私も見たわ。何もないところから出てきたわよ」


「嘘だろ。そんなことできるのなんて悪魔の類じゃないのか?」


 何だ? なにやら、周囲が騒がしいぞ。

 しかも住民たちの注目を集めているのがどうやら俺みたいだ。俺が何かしたか? 昨日は結構寝たし、目の下に隈もないだろ。俺の何がおかしいって言うんだよ。ぶち殺すぞ。


「俺に何か用か?」


「人間の言葉を理解してるぞ。やべぇって、相当高位の悪魔だ。今すぐ、冒険者を呼べ!!」


「悪魔だったら冒険者でも無理だろ。冒険者はモンスターが本業だ。大体悪魔なんておりゃ見たことねぇよ」


「そんなこと言ってる場合じゃないわ。このままじゃ私たちが……」


 もしかして悪魔って俺のことを言ってんのか? どこからどう見ても同じ人間だろ。自分の目くらい信じろよ。鬱陶しいなぁ。


「盛り上がってるところ悪いけど、人間だぞ。ってか、見たらわかるよなそれくらい」


「今度は喋りかけてきたぞ。普通じゃないぞ、こいつ」


「いや、俺は悪魔を見るのは初めてだからわからないけど、それでもこいつがやばいってことはわかる」


「いやぁぁぁーーー!!! 死にたくないわーーー!!」


 まったく話が通じない。こんなサルと俺は会話しないといけないんだ? そもそも悪魔ってなんだよ。この世界にモンスターが居るって言うのは事前に聞いてたからわかるが、悪魔って何だよ。悪魔までいんの? ここ。モンスターだけでお腹いっぱいだろ。色々詰め込みすぎんなよな。


 はあ、こいつらと関わるのが面倒になってきたな。かといってこの町からまた瞬間移動でどこかへ行くのもまるで俺が負けを認めたみたいになってしまうし嫌だな。


「もういいよ。俺に関わるなめんどい。失せろ」


「ひやぁぁぁぁーーーー!!!!」


「どっひゃぁぁぁーーーーー!!!!」


「ぴょぉぉぉぉぉーーーーーー!!!!」


 俺の言葉がやっと通じたのか、周囲にいたサルどもは、思い思いの悲鳴を上げながら猛烈な勢いで立ち去って行った。


 完全勝利だ。これで、鬱陶しいサルどもは消えた。俺は一人この町を楽しもう。

 ギャラリーが減って少し残念な気持ちもあるが、そこは致し方ないとしよう。


「あいつです!!」


「あれが突然現れたとかいう変質者か? いたって普通の人間に見えるんだが、勘違いじゃないのか?」


「私たちも見ました!! 何もないところから現れたんです。普通の人間のはずありません!!」


 安心したのも束の間、なにやら人を連れて戻ってきた。

 いいから、増援とかそういうのいらないから。俺はこの町に来たかっただけ何だよ。


 これは関わるのは面倒だから、俺のことを言ってることに気が付いていないふりをしてどこかへ離脱しよう。こいつらもサルだし、顔までは覚えてないだろう。逃げるが勝ちだ。


「ちょっと待て。お前、身分証を見せろ。すまない、俺も仕事でな。それだけ見せてくれれば解放してやれるから協力してくれ」


 尚も無視して進む。

 身分証何て門は持ってねぇんだよ。学生証じゃダメか?


「待てと言ってるだろ!!


 後から連れてきたがたいの良い男が俺の肩をがっしりと掴んだ。


「俺にふれるなぁぁぁーーー!!!」


 遠慮なく肩を捕まれ逆上してしまった。

 勢いのまま男の顔面を裏拳で振りぬき、頭部は方法へバウンドしながら建物へ激突。衰えることなく、何度も壁を突き破り、どこかへ消えていった。


「「「きゃぁぁぁぁーーー!!!!!」」」


 周囲は騒然。

 俺も自分のしたことに驚愕。

 とてもじゃないが、まともな思考に戻ることができない。

 まずい、俺がやったという証拠を隠滅しないと!! 俺はそれしか考えることができなかった。


「はぁぁぁーー!!!」


 360度を吹き飛ばすつもりで体からエネルギーを放出した。


 ドゴゴゴォォォン!!!!


 俺を中心に大爆発が起こり、世界へ真っ白になった。

 信じられないほどの威力が出てしまった。俺は周辺10メートル位を消し去れれば良いかというくらいで放ったものだが、これでは町そのものを滅ぼしてしまったかもしれない。俺の落ち度だ。俺が焦ってしまったばっかりに……まあこれで目撃者もすべて消え去ったことだし、またしても完全犯罪完成だな。結果オーライだ。一体この町にどれほどの人間が住んでいたのだろうか。多く見積もっても30人くらいだろう。それよりも多くの建物があったが、この町の住民は自分たちの家を複数所持するタイプの変人がそろっていたんだ。そうに違いない。


「またやっちまったよ。これで振り出しか。次は騒ぎを起こさないようにしなくちゃな」


 俺は反省のできる男だ。これなら、次への憂いはない。失敗しない人間なんていないんだよ。その失敗の後が大事なんだ。さぁ行こう。

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