12話
とりあえずここを何とかしとくか。このままどっか行っても良いが万が一にも俺が犯人という情報がでてこないとも限らない。そういうところでつまずくのは本当にしょうもないからな。
「ひぃぃ、た、助けぇ……」
どこからともなく声が聞こえてきた。
「ちっ、まだ生き残りが居やがったのか」
見逃してしまっていた奴がいることに自分自身に腹が立った。全員殺したつもりになっていたが、まだ一人残っていたらしい。一人かどうかわからないな、そこらに隠れている可能性はある。
索敵スキルで周囲に隠れている奴がいないか探し出そう。この声の主だけならそれでオッケーだし、まだ隠れてる奴がいるなら見つけて始末しないといけない。
「索敵スキル、オン!!」
我ながらだっさい掛け声だが、こうやって意識しないと発動したかわからないんだよな。そもそも、発動条件もわからないし口に出して確認するのが一番まるい。
俺の索敵スキルにひっかかった反応は一つ。右後方だ。どうやら、生き残りは一人だけだったみたいだな。間抜けなやつめ、声を出さなかったら助かった可能性もあったというのにな。
「出てこい。出てこないんだったら隠れてる場所ごと消し飛ばすぞ? 俺の気が変わらないうちに早くするんだな」
「え? なんで? 私見つかってる?」
あれ? 私? もしかして女か? さっきまで全員男だったから当然男だと思っていたが、これはもしかして強い女の子の登場なんじゃないか。まさかのここで仲間候補を発見か。とりあえず、殺すのは一旦保留だ。
「聞こえてるんだよな? 早くしろ!!」
「ひえぇぇ。ごめんなさい。今出ていきます」
ひょこっと建物の隙間から女の子が飛び出してきた。
これまた、汚い服を着た清潔感が皆無な女の子だな。さっきまでいた男たちの女版だな。しかし、まだ顔のレベルはわからない。もしかすると、超絶美少女という可能性は残されている。希望を捨てるな。
「なんで隠れてたんだ? お前はあいつらの仲間じゃねぇのか?」
「え? 私のことをいじめるような人を助ける必要がありますか? それに、私が出て行ったところで殺されて終わりですよ。どうか、命だけは助けてください。私もここで、ひっそり暮らしてるだけなんです」
「へぇ。それが理解できるだけでもあいつらよりはマシだな。おい、お前顔を見せろ」
近づいてきた女の顔を覗き込む。
この状況だけ見たら俺は完全に変態だな。無論、俺のことを変態呼ばわりなんてしようものなら速攻あの世行きだから、誰一人俺を変態呼ばわりできる奴なんていねぇけどな。言ったとしても消えるからそういうことだ。
近づいてみてもやっぱりぼさぼさの髪だな。金髪が台無しだ。金髪大好きの俺からしてみればこの時点でポイントが高いというのに、それを大分減点することになるな。これは、綺麗にすれば割とありよりのありだな。まぁ、及第点としよう。
それで、肝心の顔はっと……。
ふぁぁぁぁぁーーーー!!!! やべぇ、どタイプだ。こんなみすぼらしい恰好してるってのに、顔は綺麗なまま。
「どうしたんですか? 私の顔、何か変ですか?」
「いや、何でもない。お前にこれから二つの選択肢をやろう。まず一つ目だが、ここで俺に殺される。もちろん、手加減するつもりはないぞ。そして、二つ目だが、俺の仲間として一緒に旅をするか。好待遇を約束してやろう」
「話が見えません。私は殺されるか貴方について行かないといけないってことですか? ついて行けば、ご飯は食べられますか?」
「ああ、それくらいはどうとでもなる。聞き忘れてたが、お前も強いのか?」
「はい、さっきの男集団よりも強いです。だから、私は誰からも手を出されずにここで過ごせていたわけなので。貴方の足元にも及ばないでしょうが、普通の人間であれば私には絶対に勝てないと断言できます」
期待以上だ。顔は満点、戦闘力も大丈夫となると後問題になるのは……もう何もないな。絶対に連れて行こう。まずは、一人目の仲間確保だ。こんなにあっさり成功するとはな。無残に死んでしまっただけだったあいつらの死にも理由が生まれて良かったぜ。これで、俺は殺人を犯したという事実がなくなる。無罪放免だ。
「よし、俺はこの町に仲間を探しに来てたんだ。お前はちょうど条件に合いそうだ」
「条件というのは、私が女だからですか? 強さだけなら男たちでも問題なかったですよね?」
「ああ、そうだが何か異議あるのか? あんまり俺の機嫌を損ねるといいことは何もないぞ。死にたいって言うんだったら話は別だけどな。俺が単純にお前のことを気に入ったんだ、理由なんてそれで十分だろ?」
「ひっ、生意気な口を聞いてすいません。ありがたい限りです。女に生まれたことにこれほど感謝したのは人生で初めてのことです。どうか私を貴方の仲間へ加えてください」
俺の威圧が効いたのか、随分と従順な態度になったな。俺としてはそちらのほうがありがたい。
しかし、なんであれだけの人数がいたって言うのに女はこいつだけだったんだろうか? まあでも女で強く無かったらこんな美少女だと野蛮人だらけの男の中にいたらなぶり殺しにされててもおかしくないか。
「ところで、女はお前だけか? 随分と男ばかりだったが」
「はい、そもそも、私たちの一族は男ばかりなんです。女が生まれること自体が稀で、私一人しかいないんです。母親はこの路地裏に迷い込んだ女で私が生まれてすぐに殺されてしまったので顔も知りません」
そういう事情だったのか。
まあ、どうでもいいか。聞いたところで何が変わるわけでもないわ。




