10話
まずはこっちだ。俺は今まで悩んでいたのが嘘のように躊躇なく右の道へ進んだ。
流石に路地裏からすぐに出ることは叶わなかったが、しっかりと道は続いている。これなら、いつかは大通に出られるだろう。俺は二分の一を完璧に取ることができたことをここに宣言しよう。
「よっしゃー! これで俺の勝ちだ!!」
とりあえず前へ進む。路地裏だがちらほらみすぼらしい恰好をした人間がこちらを見てくるが、俺の人生には関係のない人間、華麗に無視している。それにしても、こんな路地裏にいるなんてじめじめしたところが好きな変人か?
「あんた見ない顔だな。身なりもまともだし、俺らに金を恵んでくれよ」
「俺らもう何日もまともな飯にありつけてなくてよぉ。今にも死にそうなんだ」
「そうか。働け」
恵んでもらうだなんて精神が気に入らないな。
自分で何もせずに、施しだけ受けようなんて身勝手すぎる。まずは、真面目に仕事をするところからだろ。見たところ、働けないようには見えないからな。どうせ、甘えてるだけだ。そんな奴らを助ける義理なんて俺にはねぇ。勝手にしろよ。
「俺たちだって働けるもんなら働きてぇよ。でもなぁ、俺たちを雇ってくれるところなんてこの町に一つもありゃしねぇよ」
「俺らみたいな日陰者はこの路地裏がお似合いなんだよ。兄ちゃんも俺らをそうやって差別する人間だったってことだな」
何だ? 急にシリアスな雰囲気を醸し出してきたぞ。
俺は別にこいつらに対する偏見なんて持ってない。この世界に来たばかりだし当然だろうけど。
「お前らにどんな都合があるか知らねぇが、それが俺に何の関係があるんだ? 俺がここでお前らを助けたとして何のメリットがあるんだ? 俺は見返りもなしに人助けするほどお人好しじゃねぇよ」
しっかりと自分の意思を伝えておかないといつまでも縋って来そうだ。
こいつらも実際に命がかかっているわけだ。そりゃ必死にもなるだろうよ。残念ながらここを通りかかったのが俺だったことを恨むんだな。俺に慈愛の精神なんてものは装備されていない。
惨めったらしく、こんなところでの生活に甘んじているこいつらを見ていると虫唾が走る。
どんな事情があるかは俺にはわからない。でも、それとこれとは話が別だ。甘えんなよ。
「俺らは役に立つぞ!! 今はこんななりだが、モンスターとの戦闘に置いて俺たちは役に立てる」
「そうだ、俺たちの一族は代々戦闘に役立つスキルを複数所持しているからな。この路地裏で暮らしてる奴らのほとんどが同じだ」
「モンスターと戦っても俺が勝つし、それは魅力とは言えないな。確実に俺の方が強い。なら、お前らは必要ないよな?」
こいつらがいくら強かろうが、それはこの世界を基準にした場合だ。俺はこの世界の誰よりも格段に強い自信がある。その俺がこいつらを助けて戦闘の役に立たせるだって? いらないにもほどがあるだろ。確かに仲間を探してたが、俺が探してた第一条件に美少女という項目があるんだよ。のっけから男でクリアできていないんだよ。俺が求めているのは美少女だ。大事なことだから二回言いました。
「俺らを甘く見るなよ!! どんなモンスターだって狩って見せるぜ」
「だったら、それを仕事にすりゃ良いじゃねぇかよ。なんでそれすらしないんだ? お前らの言うことは矛盾してんだよ」
「だから、俺たちは人間としての扱いを受けられないんだよ。どいつもこいつも俺たちをゴミみたいな扱いしやがって」
「へぇー。まあ、そこに事情があることはなんとなく理解した。でも、他を当たってくれ。俺だってまだこの町へ来たばかりなんだ。お前らを助けてやる余裕も金もねぇよ」
俺が金を持っていないことはまぎれもない事実だ。召喚して呼び出せば何でも出せてしまうが、それで金をばらまくのなんて木っ端図かしい真似できねぇよ。自己顕示欲強すぎてダサいわ。俺だって自分なりの美学くらいあるんだよなぁ。
「あんまりしつこいと、お前らの人生をこの瞬間で終わらせることになるぞ? わかったら他を当たれ。じゃあな」
「ははっ。兄ちゃんは随分強気だなぁ。俺たちが時間稼ぎをして仲間を呼んでるとは考えなかったのか? そもそも、モンスター相手に戦える俺たちが力ずくで金目のものを奪おうとしないと思ってのか?」
ほう? 面白い真似するじゃねぇか。
周りを見渡してみると、確かにこいつらの仲間がぞろぞろと集まってきている。要するに、こいつらは俺を襲おうってわけか。路地裏に迷い込んだ時点でこいつらの餌食ってか? とんでもねぇ町だな。住んでる人間は如何してたんだよ。治安悪すぎて俺は願い下げだね。
「前提から間違ってるからな。お前らがどれだけ数を増やそうが、俺からしてみれば虫が集まっているようなもんだ。俺に勝てると思うなよ?」
「威勢のいいこった。ここまで強気な奴は初めてだよ。大体が許しを請って泣きついて来るんだがなぁ。無知ってのは恐ろしいもんだ」
「おい、お前ら、こいつは殺しても構わねぇ。やっちまえ!!」
目の前の奴の指示で何人かが俺に向かって飛びかかってきた。




