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1話

「ここどこだよ……」


 俺は見知らぬ部屋に一人佇んでいた。

 やばいところが、ここに至るまでの記憶が俺の脳内に一切ないところだ。気が付けばここにというやつだな。人間生きてりゃ奇想天外なことも起きるもんだと思ってたが、やりすぎだろ。


 しかもこの部屋は、大量のぬいぐるみがそこらに転がっている。壁紙もピンクで統一されており、絶対に女の子の部屋だと断言できる。

 俺は無意識のうちに知らない女の子の部屋に不法侵入した変態ということになってしまう。


 大きさもバラバラ、クマがいると思ったら恐竜もまったく統一感がない。

 それに整理されておいてあるわけじゃない、さっきも言ったと思うが転がってるんだ。これだけの量のぬいぐるみを持ってて大事にしてないってのも怖いんだよ。


「逃げよう。このままじゃ俺の人生が終わっちまう……いや、もう手遅れか。いっそ、ここにで大暴れして新聞の一面に乗るくらいの爪痕を残したほうが気持ちいかもしれないぞ。どうせ、この先の展開なんて警察に通報されて寂しい刑務所生活が待ってるんだ。少しくらい女の子の部屋というものを楽しんでも罰なんて当たらないだろ」


 俺は覚悟を決めた。


「まずはタンスから行こうかな」


「あんたもう一回死にたいの?」


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「きゃぁぁぁーーー!!!」


 後ろから急に声をかけられ、恥ずかしいことに大声で叫んでしまった。

 俺に声をかけた本人も俺につられて叫んでいる。まさにカオス。


「すいませんすいませんすいません。決して俺は勝手に部屋に上がりこんだ変態じゃないんだ!! 信じてくれ!!」


「いきなりでかい声出すんじゃないわよ」


「ああぁぁぁぁ!! ごめんなさーーーいい!!」


「だからうるさいっての。静かにしないとこのまま地獄に落とすわよ」


 地獄というのは警察を暗喩してるのか? 回りくどい言い方するなよ。俺を警察につきだすつもりならそうしやがれ。俺だって最後に胸を触るぐらいはしてやるぞ。


「しっかし、あんたみたいなあほが選ばれるとはね。選ぶほうも選ぶほうよ。もう少しましな人選しなさいよね」


「おい、俺はあほじゃねぇよ」


「何を言ってるのかしら? 私があんたのこと知らないとでも思ってる? 下調べは基本でしょ? オオヤマダ シンザブロウ」


「俺の名前をなんで? 名前を尋ねるときは自分からだろ!! いや、この場合は相手が知ってたからどうなんだ? もしかして俺をここに連れてきたのはお前か?」


「あら。あほの癖に察しがいいじゃない。そうよ、あんたを連れてきたのは私。まあ、あんたを選んだのは私の意思じゃないけどね」


 俺を選んだとかわけのわからないことをぬかしやがって。

 しかしこれで俺が警察に突き出されることはなくなったな。むしろ、誘拐でこいつが逮捕だ。俺は無実だ!!


「わかった。それならいいんだ。俺が不法侵入したのかと思って焦ってただけだ。話を続けてくれ」


「あほね。ここに来るまでの記憶もないのに、どうして自分で来たと思うのよ。可愛そうに、そんなこともわからないなんて……でも、私は寛大にして博愛よ。あほだろうと、例外なく愛しているわ」


「なんだ変態か」


「は? 今なんて言ったのかしら? よく聞こえなかったらもう一度言ってもらえないかしら?」


「おいおい、耳もわりぃのかよ。お前に変態って言ったんだ。どうだ? 今度は聞こえたか?」


「身の程知らずのあほが何を言っても許されると思うんじゃないわよ。たった今あんたの処遇が決まったわ。ほんとはチート能力を授けてからの異世界転生になるのだけど、あほだし、能力なんてあっても意味ないでしょ。もうこのままでもいいわよね?」


 変態が何か言っている。頭がおかしくなってしまったんだろう。チート能力に、異世界? 俺は人間だよ。


「いいから、俺を自分の部屋に戻してくれよ。警察に通報するのはやめといてやるからさ」


「あんたまだそんな生ぬるいことを言ってるの? もう死んだあんたをどうやって家に返すってのよ。理解不能だわ」


「俺が死んだだと? いやいやありえない。俺はまさに健康体だったんだ。そうこれ以上ないくらいの健康体だったんだ!!」


「それが何よ。トラックにはねられたんだから関係ないでしょ」


 まさか、この俺がトラックに? にわかには信じられないが、この変態が嘘をつく理由もない気がする。変態の思考なんて読めるもんじゃないから断言はできないが。


「早く謝ったほうがいいんじゃない? ここままじゃ、あんたはモンスター蔓延る世界に生身で転生することになるのよ。もちろん、次死んだら本当にゲームオーバー。つまり、あんたとしての人生は完全に終わり。どう? 土下座する気になったかしら?」


「すませんでしたーーー!!」


 閃光のごとく、大いなる土下座をした。


「え? 土下座が早すぎて見えなかったわ……」


「この通りだ。俺にチート能力をくれ」


「……そうね。まあ、誠意は伝わったわ。渡さないと私も怒られるし、仕方ないから私が折れてあげる」


 やり遂げた俺はゆっくりと立ち上がる。

 今度は見えただろう? 俺の土下座は世界で一番早いからな。もはや音を置き去りにする。


「はい。これであんたはチート能力を手にしたわ。どんなものか私も知らないから質問はなしね。それじゃあ、そこのドアから出たら異世界だから行ってらっしゃい。あんまりあほなことはするんじゃないわよ」


「ああ、変態には世話になったな」


 俺はドアをくぐった。

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