花開くを待つ
「あれはまだ蕾のままだね」
だれかが咲かないままの花を指差して言った。
「いつ咲くの?」
「あれは咲かないよ」
「どうして咲かないの?」
「運がなかったからさ」
冷たい風が咲かない花を揺らした。
「運がないと咲かないの?」
「そうだよ」
「もしかして奇跡が起こるかも」
「奇跡は起こらないから奇跡というんだよ」
雨が降って蕾を濡らした。
水をたっぷり吸っても、蕾は開かない。
「あの花は死んでしまったのね」
「いいや、死んではいない。諦めただけさ」
花の色は蕾しか知らない。
その蕾は、花開くことをずっと待っている。
待つだけでは咲かないことを知りながら。
愚かにもまた、春を迎えるのだ。