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次は必ず守ります。そのためにも溺愛しちゃっていいですよね  作者: 白まゆら


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決心

 今なら分かる。前回で俺はファニーの本当の笑顔を見た事がなかった。

 それは俺だけじゃない。婚約者の王子を含め、家族も友人も誰一人として今回のようなファニーを見た事がなかったんだ。

 ずっと貴族の仮面を被って暮らしていたファニーは王子の婚約者となり、ますます弱みを見せる事が出来なくなっていたんだろう。

 王妃教育の辛さだけで泣いていたんじゃない。自分をさらけ出せない辛さで泣いていたんだ。

 それはロレン侯爵家が悪いんじゃない。ロレン侯爵家には、貴族ではありえないほどの十分な愛情がつまっている。

 ただ、ファニーが優しすぎた。

 優しい上に頭がいいから、先の事が読めてしまう。人が自分に対して何を望んでいるのかが、分かってしまうんだ。そしてそれに必死で答えようとするから、自分を押し殺してしまう。

 他人のために無理して生きた人生。摂取され続けた人生。それが前回のファニーの人生だった。

 その事に微塵も気付かず、最後は魅了の魔法なんてものにあっさりとかかり、ファニーを惨めたらしく殺した王子に、二度とファニーを渡してたまるものか。


 ……ファニーの事を抜きにした王子は良い奴だと思う。

 揉め事を避ける穏やかな気質。状況を判断しようと考え動く力。下の者の意見も聞ける耳をもち、実行させる器のでかさもある。だけど、人の気持ちが分からない。理解できないから配慮も出来ない。それが相手をどんなに傷つける事になろうかも想像できないんだ。

 俺は神ではない。魔法使いでもない。特別な力なんて何一つ持ち合わせていない。だからファニーを守る事で精一杯。上級貴族として民が傷つくのも避けたいと思うから、戦争も回避する努力はする。

 けれど、政略的な婚約と言われるソネット様の事まではどうしてやる事も出来ない。

 王子に諫言したり、いじめられている場面があれば助け舟は出す。けれどそれだけだ。王子との二人の事は二人で決着をつけてほしい。俺はファニーに飛び火しない事だけに注意する。

 本当は今回のような事があるかもしれないと、ファニーをソネット様に近づけるのも嫌だったのだけれど、実は前回でもソネット様はファニーの友人だったんだ。

 ファニーが気の抜ける数少ない友人だったから、気が合う事は分かっていた。だから引き離すのは忍びなくて、ソネット様がファニーと友人になりたいと言った時、賛成してしまったんだ。

 そばにいる友人として王子が俺を望み、王子の婚約者がファニーを望む。合同でのお茶会が決行されるのは分かっていた。

 けれど反対に俺達の仲のよさを見せつけて、諦めてくれないだろうかと淡い期待もしていた。が、それは物の見事に裏目に出てしまった。

 ファニーの素の可愛さを、王子の目に晒してしまったんだ。心を預けた者に対する優しい眼差しを。

 まさか王子がこれほどに執念深いとは思ってもいなかった。これに関しては計算外だったと悔しくなる。

 暫くは、城に呼ばれても赴かないようにしよう。逃げていると思われてもいい。

 これ以上ファニーには近づけさせない。

 後一年もすれば否応なしに王子は学園に行く。そこで黒の魔女が入学してくるか、王子に接触してくるか、はたまた魅了の魔法を使うか。答えは全て一年後だ。



 黙ってしまった俺が怒っているのかと、ファニーは狼狽えている。ああ、可哀そうに。ファニーには微塵も怒ってなんかいないのに、狼狽えている姿が可愛くて、ついフォローするのが遅れてしまった。

「あ、そういえば……」

 ファニーに声をかけようとしたその時、何かを思い出したのか急にファニーがプッと膨れたような顔になった。

 そんな顔も可愛いけれど、ちょっと恨みがましい目が気になって「他にも何か?」と聞いてみた。

「マーシャ様とセルリア様に聞いたの。お二人は私を女同士のお茶会にお誘いしたかったんですって。けれどアシュを通さず直接誘ったら、アシュが拗ねるからやめた方がいいってゲーリック様とコニック様に言われたそうよ」

 それで今まで誘ってもらえなかったんだとファニーが言うので、俺は普通に思った事を言う。

「え? 間違ってないでしょ」

「?」

「だってファニーが俺の知らない所で誰かに会うなんて、相手が女の子でも俺は拗ねるよ」

 かああぁぁ~、とファニーの顔が赤くなっていく。ああ、本当に可愛いな。

「ず・ずるいよ、アシュ。そんな言い方……アシュだって、私に言わずに人に会う事だってあるでしょ」

「うん、不本意ではあるけどね。本当はファニーとずっと一緒にいれたらいいけれど、そうもいかないから辛いよね。けれど伝えられるものは全部伝えてるつもりだけど、足りなかった?」

「そ・そういう事じゃなくって……」

 かああぁぁ~、とますます赤くなるファニーをそろそろ落ち着かせようと、俺はごめんねと言って、ファニーの言いたい事は分かっていると伝える。

 今までは子供だからファニーの交友関係に俺が横やりを入れてこられた。けれどファニーも十二歳だ。これからは淑女として女性同士の付き合いもしていかなくてはいけなくなるだろう。

 基本的にロレン侯爵家は俺の味方だから、ファニーの行動は把握できるだろうけど、それを俺が一々良否を論する事など出来るはずもない。

 この国では夫ならば妻の行動の制限を決める事が可能だが、まだ俺はファニーの婚約者であって、夫ではない。まあ、夫になってもファニーの行動に制限する気はないけれどね。

「マーシャ様とセルリア様ならファニーも楽しく過ごせるだろうし、これからは女性同士の付き合いには、口を出さないようにするよ。ちょっと寂しいけれど我慢するね」

 ニコリと笑いながら少し眉を下げた表情を作ると、ファニーは先程まで怒っていたのも忘れて慌てて俺の手を握る。

「ア・アシュを蔑ろにしてるんじゃないのよ。ちょっとは女の子だけで話がしてみたかっただけなの。ちゃんと行く時はアシュに知らせるし、男の子がいる場所には行かないから、そんな寂しそうな顔しないで。私もアシュが私の知らない所で女の子と会ったりなんかしたら嫌だし、アシュを寂しがらせるような事はしないと約束するわ」

 必死で俺を慰めようとするファニーに俺がほっこりしていると、ずっとファニーの腕の中で大人しくしていたルミが(腹黒)と言ったので、ルミをそっとファニーの腕から降ろして、双子の弟達に手渡してやった。

「「わあぁ~い、ルミ、ルミ♡」

「みぎゃあぁぁぁ!」

 ルミは双子の手によって揉みくちゃにされた。

 暫くしてぐったりしているルミを、双子から救出して寝床に返してやりながら『今夜、夢の中でファニーと王子とのやり取り詳しく教えてね』と言うと、じろりと睨んだルミが、お返しだといわんばかりに引っかいてきた。

 ちぇ、せっかく助けてやったのに。

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