表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
次は必ず守ります。そのためにも溺愛しちゃっていいですよね  作者: 白まゆら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/81

助言

 敵を躱しながら逃げ続けた俺達に、二年後ハワード様から連絡が入った。

 実は俺達が逃亡した後すぐに彼女が亡くなったという事にして、ゴルフォネの彼女の実家で葬儀をあげていたそうだ。しかし、諦めない敵がどこからか俺達の居場所を探りあて、襲ってきていた。

 全ての者を俺が密かに処分し、彼女には一切力を使わせなかった結果、彼女の存在は闇の中に消えた。

 ほとぼりが冷め、ダンバ国に戻って来いという許しを得たのだが、念には念をというわけではないが、俺は意外と彼女との逃亡生活が気に入ってしまい、また傭兵業も向いていたのか、更に三年を過ごした。



「――けれど一生そのままというわけにもいかず、そろそろ戻ろうかと考えていた時期に、ファニリアスの婚約を聞いた。しかも相手はハワード様の息子ときたもんだ。こりゃあ一目見る価値があると思い、勢い込んで戻ってみると、お前は秘密を抱え込んだ一癖も二癖もあるガキだった。放っておけるわけないよな。で、かかわった結果が今に至ると……」

 師匠は、俺を指さしニヤニヤと笑っている。

「……何て言うか……とりあえず、父の所業については謝っておきます。すみません」

 長い長い師匠の話が、まさかの父関連だとは思ってもいなかった俺には、何も返せる言葉がない。

「ハハハ、勘違いするなよ。俺はこの生き方を気に入ってるんだぜ。ハワード様に会わなかったら今頃はただのお飾り騎士だ。そんな人生に何の魅力がある?」

 胸を張る師匠に、俺は苦笑が漏れる。

「それはそれで、師匠の実力なら遅かれ早かれ近衛隊隊長の座にはついていたでしょうし、貴族の娘を嫁にもらっていい父親やっているかもしれませんでしたよ」

「今も貴族の女を恋人にしてるぞ。結婚はちょっと難しいかもしれないが、それでいい。子供の有無も気にしない。二人で過ごせるなら文句はないさ」

 師匠の言葉に俺はおっ? と眉をあげる。

「ミルフィール様に振られてなかったんだ」

「ああ? 当たり前だろうが。五年も一緒に逃亡劇を続けていたんだぞ。振られてるはずがないだろう」

「だって、ハワード家に来てからこの五年、お二人が会っているようには見えなかったので……」

 そうなんだ。師匠はこの五年、我がハワード家で過ごしていたが、女性の影が一切なかった。

 だから俺は好きになった女の人の為に職を捨て、他国に渡ったと聞いた事が信じられなかったんだ。

 すると師匠はしてやったりと、今までで一番嫌な笑い方をした。背筋がぞくっとするようなニタ~っという感じで。

「散々ハワード様にはやられたからな。息子のお前に仕返しできて嬉しいよ。そうか、そうか。お前は俺の恋人に気付かなかったか。へへへ」

 親の仕返し、子供にするなよ。と言いたいところだが、流石に父に人生変えられた人にはその権利はあるかもしれない。

 俺がジトリと睨むと、師匠はヘラヘラしていた顔をやめ、種明かしをしてくれた。

 曰く、彼女は存在を消されたとはいえ、いつ何時、悪意ある者に見つかるかも分からない。その為極力目立たぬよう過ごす必要がある。彼女は変装し、侍女としてハワード家に潜り込んでいたそうだ。

 師匠と同じ時期に雇った侍女などいたか? と記憶を探るがそこはそれ、頼れる執事マイロフが上手く時期をずらし、潜入させてくれたようだ。

 師匠が初めてハワード家に来た時、マイロフに捻じ伏せられていた原因の一つでもある。

 要するに先に事情を話しておけと。そうすれば師匠より先に安全な我が家に招き入れてあげられたものを、淑女を後に回すなど紳士としてあるまじき行為だという事らしい。何て事はない。二人は顔なじみだったのだ。流石キングオブ執事マイロフ。

 しかし、どうりで父も家の者も皆、師匠を簡単に受け入れたわけだ。事情を知ると今まで不思議に思っていた事が、すっきりする。

「……では、五年の逃亡生活の間に師匠は魔法の力を分け与えられたのですが?」

 魔法の話に戻すと、師匠は真面目な顔でコクリと頷いた。

「逃亡してすぐだったかな? 敵の一人から力を分け与える方法を聞いたんだ。この先どうなるか分からない状況で、ミルフィールは不安になっていたんだな。俺が死んだらどうしようと。そんな時に聞いた情報だったから、少しでも生きられる確率を上げる為に、受け取ってほしいと言われると断れなかった。そんなものが欲しかったわけではないからな。けれど、受け取る事で彼女の不安が少しでも和らぐならと受け取った。それに力を分け与えられるのは一生に一度、一人だけだというから、それならば俺が受け取れば彼女は他の奴に渡すことが出来なくなるし、それに彼女の苦しんでいるものをわかち合う事が出来る。まあ、彼女のような大きい事は出来ないがな。せいぜい光を灯したり、水を少量出せたりとか、生活が楽になるぐらいだ」

 ハハハと笑う師匠の気持ちがすごく良く分かる。そうだよな、彼女を危険にさらすそんな力、欲しいわけないよな。けれど、彼女の不安な気持ちも良く分かるから。受け取る事で彼女が安心するのなら、受け取るしかないよな。それに彼女の苦しみを二人でわかち合えるなら、そんな嬉しい事はない。

 ――けれど、そうか。そんな女性がそばにいたから、俺の話も信じてくれたんだな。俺は心が少し軽くなったような気がした。

「……なあ、アシュ」

 師匠が火に薪を加えながら、先程より低い声で話しかける。

「お前の秘密、ハワード様に話す気、ないか?」

「!」

 俺は驚き、目を見開く。

 正直、その考えはなかった。

 師匠には信じてもらえようが、もらえまいがいずれ話すと決めていた。

 けれど、他の人には……特に身内には……信じてもらえなかったら、正直……辛い。

「ハワード様は魔法の存在を知っている。もしかしたらミルフィールの力を貸してやれるかもしれない。そこのところ、俺の一存では決められない話なんだ」

 ああ、そうか。師匠は何かあった時、ミルフィール様の力を貸してくれようとしているんだな。だけど、ミルフィール様の力は国がかかわるもの。ゴルフォネ、ダンバ両国が関与する中、師匠一人ではどうする事も出来ない。それに、魔法がこれからどのように作用してくるか分からない今、ミルフィール様の力は大きな助けとなる。そしてここまできたのも、父が裏で手を回していたから。父の計画で事は進んでいた。だからこの件に関しても父の手を借りられれば、前回のような事件を回避できる可能性はぐんと上がる。父に話すメリットはある。あるけれど……。

「……正直、父に信用してもらえるか……自信が、ないんです」

「身内に否定されたらと思うと、辛いよな」

 師匠は分かっている。分かってくれている上で、話してくれてるんだ。

 俺はごくりと唾を飲み込む。

「……お前から見た、ハワード様はどういう人だ?」

「え?」

 突然師匠が話を変える。父の性格なんて、優しいけれど鉄拳制裁が当たり前な厳しい人で……。

「俺から見たハワード様は、いつも自信たっぷりで機転も利く、優秀な方。その上、ユーモアも茶目っ気も充分におありの方だ」

 師匠の父上評価が余りにも良すぎて、俺はつい半目になってしまった。

「……そんないいものですか?」

「ハハハ、ではどんな方だ?」

 どんな方……そうか、そうだな。

「そうですね……息子の話は、しっかりと聞いて下さる方です」

 師匠の意図する事が、やっと理解出来た。そうだな、ちゃんと聞いてくれる人だった。

 ファニーの時も、鉄拳制裁は受けたが、ちゃんと聞いてくれた。美人だったかと。

「俺も同席する」

 師匠は俺の頭をくしゃくしゃとかき混ぜると、当たり前のように一緒にいてくれると約束してくれた。

「頼りにしていますね、師匠」

「こんな時だけ頼るなよ」

 またもやくしゃくしゃにかき回された。

 師匠の頭と違って、旅の途中でもちゃんとセットしているんだから、余り乱さないでもらえますかねぇ。



 一晩山で過ごした割には、スッキリとした目覚めだ。俺達一応貴族なのにな。どこででも眠れる自分に吃驚だ。

 相変わらず霧は濃い。けれど足が軽ければ前へは進む。師匠の魔法もバッチリだ。

 正直、水を汲んだ後の善後策が見つからなかった俺は、師匠との話し合いで少しだけ先が開けたような感じがした。ほんの少しだけだけどな。

 木々を掻き分け、草を踏み、目的の場所へと進む。

「しかし、アシュはよく進む方向が分かるな」

「白の魔女に直接頭に叩き込まれましたから」

 トントンと己の頭を指で叩く。

「白の魔女って、あの猫か……なんか複雑だな。ミルフィールの先祖が、猫と同族なんて……」

「……勘違いしないで下さいよ。魔女は力が弱っているから、安全の為にも猫の姿をとっているだけで猫ではないです。あくまで仮の姿ですよ」

「そうか……そうだな。それにあの猫は美人だ。人間の姿に戻ったらさぞかし美人だろう。ミルフィールの同族なのだからな」

 うんうん。と勝手に納得している師匠をつい半目で見てしまったのは、許してほしい。

 この人は本当にミルフィール様が大好きなのだろうな。俺がファニーを思っているのと同じくらいに。

 だってそうでないと自分の人生を捨ててまで、一人の女性に寄り添えるはずがない。

 その辺の事情を話せば、今度こそルミも師匠の事を気に入ってくれるだろう。

 そんな話をしながら前へ前へと進むと、頭にひっかかるものがあった。

 なんの変哲もない場所なのだが何故か気になり、より一層深くなる木々の中を入っていく。

 突然の俺の行動に師匠は驚きながらもついて来てくれる。途中「ちょっと待て。一人で勝手に行くな」と怒鳴ってはいたが、そんなのは聞こえない。

 そうして右・左とジグザグを繰り返しながら、進んだ先にはポッカリとした開けた場所があった。

 人が五十人ほどは座れるその場所の中央には、小さな窪みがあり、そこには泉のように水が溜まっていた。これが白の魔女の言っていた精神系の魔法を弾く水。魅了の魔法を無効に出来る水。

 俺は改めて辺りを見渡す。後ろからついてきた師匠も、その場所を見ながら「ここか」と呟いている。

「……空気が、清浄化されているみたいだな。この場所の水が魔法を弾き返すという話も納得できるかな」

 俺もそう思う。周りの霧が濃かった所為もあるけれど、この場所に着いたら体が軽くなった気がする。

 師匠の意見に賛同しながらも、水に近づく。危険なものはなさそうだ。

 手に一口溜めて啜ってみる。その水は仄かに甘く、一口飲む事に力が付く気がする。

 師匠にも場所を譲って飲むように勧める。水の効力はあくまで精神系の魔法にしかきかないようだから、師匠の魔法には影響ないだろう。

 一口飲んだ師匠は「うめえ!」と言って、コクコクと飲む。これは無理にでも来て正解だったかな。

 俺は持ってきた入れ物に出来る限りの水を汲む。計六本の水をもつと結構な重さになった。

 これを担いで山を下りるのかと腹をくくると、師匠が隣でフフフと笑う。

 何事かと思いきや「俺が付いてきてやった事を、有難く思いな」と言い、小さくなる魔法を使ってくれた。水は手の平サイズになり、それならば最初に言ってくれれば、もっと入れ物を持ってきたのにと有難く思いながらも、不満も感じた。まあ、山に入るまでは魔法のことは秘密だったのだから、仕方がないといえば仕方がないのだが。

 帰りの道のりは早かった。

 心も体も軽くなった俺は、霞む先もなんのその、足取り軽く無事に山を下りる事に成功した。

 途中、師匠が「早すぎる。もっと慎重に動け!」と怒鳴り散らしていたが、気にせずホイホイ下り、数匹の獣を叩きのめして無事に下りたら、山を抜けた所でボコられた。

「お前には、もっと協調性を身に付けさせないと駄目だな」

 プリプリ怒る師匠に俺は、近くの村の宿に行ったら俺がファニーに手紙を送ると同時に、ミルフィールさんにも手紙を書くように勧めてみようと考えた。

 ファニー不足の俺と同じで、師匠もミルフィールさん不足なんだな。きっと。だから怒りやすいんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ