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次は必ず守ります。そのためにも溺愛しちゃっていいですよね  作者: 白まゆら


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ミルフィール

 それから三年の月日が経った頃、大国ゴルフォネから一人の令嬢が現れた。

 彼女の名前はミルフィール・ガドラ辺境伯令嬢。ピンクかかった銀髪に青い瞳の儚げな美女だった。

 俺より二つ年上の二十五歳といわれ、結婚しているのかと少し落ち込むが、彼女はなんと未婚だという。

 貴族の令嬢としては行き遅れと思われてしまうような年齢だが、何故か彼女にはそんな言葉は似合わなく、どこか少女のような愛らしさがあった。

 そんな彼女に何故か俺が、直接護衛の任を命ぜられた。それも極秘に。

 隊長である俺に何の説明もなく命令する事など、普通ではありえない。

 けれどそれをやってのけたのは、三柱の一つウルシオ・オーマン公爵だった。

 オーマン公爵家は国の軍事を統率している家柄だ。俺の所属する近衛隊は王の直接の配下であるため、オーマン家の支配下から外れるが、王と連帯している場合は俺達もまたオーマン家の配下となる。

 そのオーマン公爵から直々に彼女を紹介された俺は困惑しながらも、内心どこか華やいでいた。彼女と過ごせる日々を。

 俺の目の届く範囲にいて下さいよと言うと、執務室で書類仕事をしている俺の横で読書をしたり、鍛錬の見学をしたりしていた。

 俺に時間が空いたとみると、すぐにお茶を入れたがり、貴方の護衛をしている最中なのですが。とか言いながらも、結局は嬉しそうな笑顔に負けて、二人でお茶の時間を過ごす日々が続く。

 俺にこんな時間がもてるようになるとは、自分でも驚きだった。


 そしてそんな日々は長くは続かない。

 壊れたのは一人の刺客から。

 その者は、突然未知なる力を使ったのだ。

 刺客から剣を叩き落とした俺の目の前を、小さいながらも炎が燃え盛る。俺はその光景が信じられなかったが、火は確実に本物。咄嗟に背後に庇っていた彼女を胸にかき抱く。彼女だけは守らねばと。

 離してくれと言う彼女を必死で抱え込み「貴方だけは守ります」と柄にもない事を言う。

 彼女は目に大粒の涙を溜めながら「ごめんなさい」と。

 そして瞬く間に水の竜巻が俺達の周りで巻き起こり、あっという間に炎を消し去った。

 驚く俺と鬼気迫る笑い声をあげる刺客。彼女は俺の腕の中で俯いている。

 どういう事だ……これは?

 考える暇もなく刺客が叫ぶ。

「やはり魔女の力は目覚めていたか。その力、俺に寄越せ!」

 彼女に掴みかかろうとする刺客の腕を、俺はスパリと切り落とした。

 汚い手で彼女にふれるんじゃねえ!

「ぎゃあああぁぁぁ!」

 刺客の悲鳴が、部屋中にこだまする。

 彼女は怯えながらも「手さえなければ、彼には炎はだせません」とアドバイスをくれる。

 そうしてやっとの事、騒ぎを聞きつけた城の兵士が駆け付ける。

 俺はその場の処理を任せると、彼女を安心させるべく、俺の執務室に連れて行く。


 落ち着いた彼女から教えられたのは、魔女の存在。

 おとぎ話のなかだけの存在だと思っていた。それが現実として目の前にいる。いや、正しくは魔女の血を引き継ぐ者であり、魔女自身ではないそうだが。

 どうやら彼女の祖先には、白の魔女がいたそうだ。そうして何代目かにその力が現れる。いわゆる先祖返りといわれる者。

 彼女は十五歳という多感な時期に、その力が目覚めたそうだ。

 婚約者と馬車で街まで買い物に行った帰りに盗賊に襲われ、目の前で婚約者が殺された。

 その光景にパニックになった彼女が力を暴走させて、気が付けば辺り一面血の海。生きているのは自分だけだという恐怖に茫然自失となり、彼女はしばらくの間記憶を失っていたそうだ。

 幸か不幸かガドラ辺境伯のその血筋については、ゴルフォネ国の王が理解していた。

 また辺境伯とも友人である事から、秘匿にしてくれるという好条件をいただけた。

 ゴルフォネでは内密ではあるが、古の頃より魔女絡みの問題がたびたび発生するらしい。

 城の中枢部には魔女に関して専門の知識をもつ者もいるらしく、これまでも秘密裏に処理されたきたとの事。

 しかし、当然の事ながらこれ以上、その秘密を知る者が増えるのは問題だという事で、その後彼女に縁談はなくなり、領地内でひっそりと暮らす事が条件とされた。

 しかし、秘密はどこからか漏れるもの。

 誘拐されそうになった彼女が再び力を発する状況に陥った。どうにか暴走は免れ、小規模の被害ですんだそうだが、彼女の力を利用しようとする者は他にもいるようで、王と辺境伯は考えた末、彼女を他国へ遊学させようと決意した。

 暫くの間、平和な地に身を隠してもらいたいという親心だろう。

 そこで選ばれたのが、我がダンバ国だ。

 ゴルフォネとは友好国でもあり、魔女という存在が空想上の者と化している我が国では、彼女の存在はない者として扱える。

 また王はハワード家と個人的に信頼関係があり、いざという時は力になってくれるとの密約を交わしていたそうだ。

 なんでも王が若かりし頃、極秘に動いていた問題で危うく大怪我をしそうになったところを、これまた幼いハワード様に助けられた事があったそうだが、先々代の代からゴルフォネ国の王族とハワード家とは繋がりがあったとかないとか……本当のところはどこまでが分からないが、けれど信頼関係は確実に結んでいるといえよう。

 くっそうぅぅ! ハワード様め。

 だから彼女の護衛に俺が選ばれたわけか。本当にあの方はやってくれる。

 話が終わった後、彼女は「気味が悪いでしょう。ごめんなさい。もう守ってくれなくて大丈夫よ」と震える体を自身で抱きしめながら言ってきた。

 俺はそんなに小さい男に思われていたのか? 

 段々と腹が立ってきた俺は、彼女を横抱きに抱えると(いわゆるお姫様抱っことかいうやつだ)一目散に城にあるハワード様の執務室へと向かった。

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