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次は必ず守ります。そのためにも溺愛しちゃっていいですよね  作者: 白まゆら


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18/81

友人

 いきなり四人の父親の爵位を言い当て、キビキビと動く俺に目を丸くさせていた四人は、俺が「どうぞ」と二人の令嬢に椅子を引く姿で我に返った。

「ハワード様にそのような事……恐れ多いです」と、慌てて後ずさるマーシャ嬢に「紳士として当然の事ですよ」と俺は笑う。すると二人の令嬢は顔を真っ赤にして「あわわわ」と言いながらも、俺の引いた椅子に腰かける。

「ゲーリック様とコニック様もどうぞ」とファニーが声をかけると二人は「は・はい」とこちらも顔を真っ赤にして、腰かけた。

「いきなり名前呼びで失礼。皆確か七歳だったと記憶しています。折角の機会ですし、全員名前呼びで如何ですか?」

 俺がそう言うと、緊張でガチガチになっていた四人が、呆けた顔をする。

「え? 七歳なの、じゃなかった。七歳なのですか? ハワード様もロレン様も?」

「ええ、そうです。ですからアシュレイとファニリアスとお呼び下さい」

「嘘、信じられない。もっと上だと思ってた」

「そういえば父上が、アシュレイ様と同じ年なのにこうも違うとは……て、愚痴ってた」

 コニックが余りにも驚くので、落ち着かせようと名前で呼んでくれと言うが、セルリア嬢も俺の言葉は耳に入っていないようで、もっと上だと思っていたと言われたのには、いくつだと思っていたんだと問いだたしたくなった。

 そしてゲーリックが父上の話をしたので、そういえばと俺はダクラス侯爵を思い出す。

「ああ、ダクラス侯爵とは町で父上といる時に出会った事があります。その時の事を覚えて下さっていたのでしょうね。ダクラス侯爵はお変わりなく?」

「ピンピンしてる。じゃなくて、しています。毎日ガミガミ煩い。じゃなくて、小言が煩いです」

「お父上にむかって煩いって事自体、駄目だよ」

「え、駄目なの? ええっと……」

 ゲーリックは必死で敬語を話そうとするが、上手くいかないようだ。コニックが慌てて窘めるが、段々訳が分からなくなっているらしい。

「ゲーリック様、ご自分のお言葉で結構ですわ。ここには畏まる方もいらっしゃいません。アシュと私はこのような物言いですが、普段からなのでお気になさらず」

 ファニーがニコリと笑って言うと、ゲーリックは「え、いいの? 良かったぁ~」と安堵の溜息を吐く。

「社交辞令だよ。本当に気を抜いたら駄目だよ、ゲーリック」

「社交じ……って、何?」

 コニックがまたもや慌てて窘めようとするが、ゲーリックは首をかしげる。同じ年の男の子だがなんだが可愛いな。俺やファニーの会話は王子やギルバード様との間で通用するのであって、同年代にはまだまだ早いだろう。

 俺はクスリと笑って、慌てている四人に机をトントンと叩いて注目を集める。

「社交辞令なんかじゃないよ。本当に普段の言葉でいいんだ。私達は普段年上の中で過ごしているから、どうしてもこのような口調になってしまうだけ。気にしないで。それよりも同じ年だって知らなかったのなら、どうして私達に声をかけてくれたの?」

 そう言うとゲーリックとコニックはホッとしたような顔をし、マーシャ嬢とセルリア嬢は椅子に深く座り、背筋を伸ばした。

「気付かれました? 今日の会は私達が一番年下なんです。だから私達緊張して、端でおとなしくしてたんだけれど、さっきファニリアス様に陰口を叩いてた子達に、私達も散々嫌な事言われて……」

「そうだよ。あいつら僕達の食べ方が汚いとか、子供が来る場所じゃないとか言ってて」

「おしめの取れない子がお母様いなくて平気? とかも言われた。私今日は王子様に呼んでもらったからもう大人だねって、お父様とお母様が喜んでくれたのに」

「他の子達も色々と言われてました。自分達はもうすぐ学園に通う大人だから、ちゃんと見本にして見習えって」

「ただ単にババアなだけじゃん」

「「「「…………………」」」」

「……アシュ……」

「いや、失礼」

 マーシャ嬢が話し始めた内容に、ゲーリックが食いつき、セルリア嬢もコニックも話してくれた。

 あのトリオは十三歳にもなるのに、頭の中がお粗末すぎる。

 ジェルダー公爵令嬢など仮にも公爵家を名乗るくせに、子供の躾はどうなっているんだ? その心がつい言葉になって口から出てしまったのを皆聞いていて、四人は固まってしまった。

 唯一慣れているファニーに駄目だしされたので素直に謝っておく。

 コホンと咳払いをすると、石化から解けたゲーリックがブハッと笑いだす。

「あはははは、アシュレイって面白い。さっきあいつらにビシッと言ってくれただろう。僕嬉しくって。それで思い切って声かけてみようって事になったんだ」

「それよりも最初に入って来た時から、すっごく素敵だったの。大人みたいにアシュレイ様がファニリアス様をエスコートしていて」

「皆注目してたよね。あの三人も凄い目で見てたよ。羨ましかったんだろうな」

「王子様達が来られても対等にお話しされていて私達、二人は王子様と同じ年なんだって思ったの。だけど私達と同じ年だったなんて、凄く吃驚したけど嬉しい」

 勢いが付いた四人は口々に囃し立てる。おお、このノリ初めてかもしれない。ちょっと圧倒されるけど嫌な感じではないな。チラリとファニーを見るが、ファニーも喜んでいるみたいだ。

 ちなみにゲーリックは、もう俺を呼び捨てにしている。構わないけれどね。

「アシュレイはあの三人、怖くなかったの? 年上の人に嫌な事言われると怖いだろう」

 ゲーリックが仔犬のような目をクルクルさせて、俺の腕にくっつく。懐かれたな。

「ただのおばさん……コホン、もとい年上なだけだろう。怖くもなんともないと思うけど。反対にどうして怖いの?」

 女性陣が、俺がまたおばさん発言したのを聞いて、肩を震わせている。普通に笑っていいと思うけれど、淑女はそうは出来ないか。

「だって、ただでさえ自分よりもでかい女が、眉吊り上げて怖い顔で笑うんだよ。普通に怖いじゃん」

「獣よりは可愛いよ。威嚇したって牙は出ないじゃない。爪は出るかもしれないけど」

「え? 何、その比較対象? アシュレイ様の基準が分からない」

 ゲーリックが可愛くフルフル震えながら言うが、黒の魔女に会った今、あれ以上に怖い女などいるはずがない。

 まあ、それを言う訳にもいかないので、獣と比較してみたが、伝わらなかったみたいだ。

 マーシャ嬢には目を丸くされてしまった。


「楽しそうだね、アシュレイ」

 王子達が戻ってきて、俺に声をかける。

 ゲーリックがパッと俺の腕から身を離す。四人は突然の王子登場に固まってしまった。

 どうしても関わりたいようだ。あんまりファニーを王子に近付けたくはないが、仕方がない。

「お疲れ様です。挨拶はお済ですか?」

「一通りはね。それよりアシュレイ、ちょっと相談があるのだけれど……」

「相談ですか?」

「とある令嬢方に関して、何か知っているかと思ってね」

 ギルバード様がチラリとトリオの方に視線を向ける。

 なるほど。今日の会場でのいざこざを知りたいのだろう。子供達がそれぞれ家に戻って両親に話してしまうと、今日の主催の城の責任になりかねないからな。事前にちゃんとした情報がほしいといったところだろう。

「分かりました。バルコニーの方に移動しましょう」

 バルコニーならば子供達は余り寄ってこないだろうから、話を聞かれる心配もないだろう。

 王子とギルバード様、俺とで移動する事に決まった。

 俺は自身の椅子を引き、ソネット様を見る。

「どうぞ、ソネット様。私の座っていた椅子で恐縮ですが、こちらで皆とともにお待ちいただけますでしょうか。すまない、私の食器を片付けてこちらの令嬢に新しいものを。ファニー、マーシャ嬢、セルリア嬢。ソネット様をよろしくお願いします。ゲーリック、コニック、君達の出番だ。淑女を飽きさせないようにするのも、紳士の役目。ソネット様に笑顔をお届けするように」

 俺は王子の隣でそっと控えていたソネット様に、座るように促し、給仕にお茶の用意をさせ、七歳児組に無茶ぶりをした。

「えええええ~~~~~!」

 案の定、ファニー以外の四人は顔面を蒼白にし、あたふたし始める。

「ソネット様、お疲れでしょう。おみ足は傷まれませんか?」

 流石ファニー。俺の意図する事をよんで、自然にソネット様を労う。

「ええ、ありがとう。けれど……」

 ソネット様はまだオロオロしている四人に気兼ねするらしく、困った表情をする。そんな様子を見て、俺はニコリと微笑む。

「心配しないで。ソネット様はとてもお優しいお方ですよ。マーシャ嬢、セルリア嬢、かしこまらなくても大丈夫。ゲーリック、コニック、いつも君達が話すような事でいいんだよ。そうだな、ダクラス侯爵の事とかね」

「え、父上が煩いって話していいの?」

 うん、もう言っちゃってるね。けれどそれでよし! 気兼ねなく話した方がソネット様も安心されるだろう。

「ゲーリック任せた。コニック程々に監視よろしく。令嬢方はご存分に笑顔で。それを窘める方はここには一人もいません。大人は存在しない空間ですからね」

 俺がトリオを皮肉を込めながらや揶揄うと、七歳児組はもちろんの事、ソネット様も王子とともに聞き及んでいるのだろう。クスッと笑って口元を押さえる。

「アシュレイ様って楽しいお方ですのね」

「いえ、私はいたって真面目です」

 そう言うと皆が突然大笑いする。なんだ? 何か変な事言ったか? まあ、雰囲気は和んだみたいだし、笑ってくれるのならそれが一番だ。

 特にファニーが嬉しそうにしている姿が見られて俺は大満足。

 そうして待たせていた王子とギルバード様に会釈して、バルコニーへと移動したのだった。

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