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次は必ず守ります。そのためにも溺愛しちゃっていいですよね  作者: 白まゆら


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真実

(オキテ)

 俺の眠りを妨げるのは、以前に聞いた声。

(オキテ、チョウダイ)

 すぐに起きなければいけない。だってこの声は七歳に戻った事と関連のある声なのだから。

 俺は寝ぼけた頭を振り、目を開く。

 そこには白い服を着た、足首まである長い白髪に薄い緑色の瞳の儚げな美女が立っていた。

 真っ白な靄の中、二人だけが立っている状態。ここは夢の中なのだろう。

(キキタイ、コトガ、アルノデショ)

 何となく、彼女は悪い者ではない。とふんだ俺は意を決して彼女と会話する事に決めた。逃げてはいけない。ちゃんと聞かなくては。疑問に思う事、全て。

「……あり過ぎて何から聞いていいのか分からない。君がこの時代に戻したんだよね。凄い力だと思うけれど、君は何者?」

(ワタシハ、シロノマジョ。ソウヨ。ワタシガ、ジカンヲ、マキモドシタノ)

 白の魔女? 魔女なんて現実に存在したのか? いや、確かに古より何度か歴史に上がってきた事はあるが、実際出会った人間などいなくて、本の中だけの空想上の者になりつつある存在だったはず。

 ……けれど、彼女は目の前にいて、現実に時間を巻き戻している。その中で今俺は生きているのだから、信じずにはいられない。

「――分かった。君が魔女だという事は信じるよ。それよりも時間を戻したって、どうしてそんな事をしたの?」

(カノジョヲ、タスケタ、カッタカラ)

「彼女? 彼女って誰の事?」

(ファニー)

「! 君は彼女を知っているの?」

(アナタモ、シッテイル。キョウ、アッタ)

「俺の事も? 今日会ったって、今日……あっ!」

(ワタシハ、ルミ)

 あの白猫?

「どうして魔女の君が、白猫の姿をとっているの?」

(クロノマジョニ、チカラヲ、ウバワレタカラ)

「黒の魔女って?」

(ローズマリー)

「!」

 ちょっと待て。ローズマリーってあの前回、俺達というか王子の傍にいた、あのローズマリーか?

 俺は混乱する頭を、心を必死に落ち着かせようとする。名前を聞くだけで蘇る怒り。落ち着け。落ち着いてちゃんと話を聞くんだ。

「順を追って話を聞きたい。いいかい?」

 ルミはコクンと頷いた。


(ワタシタチ、シロノマジョハ、アイヤイヤシヲ、ツカサドル。タイシテ、クロノマジョハ、アラソイヤ、モメゴトヲ、コノム)

 確かにこの国においても白は平和の象徴で、黒は紛争の象徴としている。

(クロノマジョハ、ヒトリノ、ニンゲンニ、コイヲシタ。ソレガ、コノクニノ、オウジ)

 この国の王子って、それはランバース・ダンバ。ファニーの元婚約者か。

(オウジハ、コンヤクシャニ、ムチュウ。クロノマジョハ、アイテニモ、サレナカッタ)

 確かにランバは、ファニーに夢中で他の女なんて相手にもしなかったな。

(カンガエタ、クロノマジョハ、ワタシカラ、ミリョウノマホウヲ、ウバッタノ)

「魅了の魔法? 魅了の魔法ってもしかして、誰もがローズマリーの言いなりになっていたあの状態……まさか、俺達は奴に操られていたのか?」

 俺は愕然とした。確かにあの光景は異常だった。ローズマリーの言う事は絶対で、俺も何度もおかしいとは思いながらも、最後には言う事を聞いていた。

 体が自由に動かなかった。思考が働かなかった。ローズマリーの言う事さえ聞いていれば、ローズマリーの笑顔が見られると喜んでいた。心から愛した人が、苦しんでいるのに……。

(ミリョウノマホウハ、ホンライ、ココロヲ、ミダシテイル、ヒトヲ、オチツカセル、タメニ、ツカウモノ。ハナシヲ、キイテ、モラウタメニ。ココロ、オダヤカニ、スルモノ)

 間違っても人を言いなりにするものではないという事か。けれどローズマリーのやり方は……。

(アノマホウハ、カナリノ、マリョクヲ、ヒツヨウトスル。ワタシハ、ハンブンノ、マリョクヲ、ウシナッタ。テイコウシテ、デキタキズガ、カラダジュウニ、ノコッタ。アナタガ、チリョウシテクレタ。ゼンカイデハ、アナタハ、イナカッタ。ファニーガ、ヒトリデ、ミテクレタノ)

 そうだよな。前回はファニーにとって俺は王子の取り巻きで、単なる幼馴染の一人だったから、そばには入れなかった。ファニーは一人で白の魔女を助けたのだろう。ん? じゃあ、白の魔女はずっとファニーの近くにいた?

「……ちょっと、待ってくれ。じゃあ、君は前回ファニーの状況を知っていたという事か。傷つき、ボロボロにされ、最後には命まで奪われて……何故、助けてくれなかった? 君も魔女なのだろう。ファニーのそばにいたんじゃないのか?」

 俺は白の魔女に掴みかかりそうになる。が、夢の中の俺の体は動かない。白の魔女は痛ましそうに俺を見つめる。

(マリョクガ、タリナカッタノ。モトモト、クロノマジョは、ワタシヨリ、チカラガ、ツヨカッタ。ダカラ、ミリョウノ、チカラモ、カンタンニ、ウバワレタ。ワタシハ、ヒトノスガタヲ、タモツコトモ、デキズニ、ネコノスガタニ、ナッタ)

「だけど、時間を戻すほどの力はあったんだろう。現にこうして戻っているんだから」

 俺の言葉に白の魔女は苦笑をもらす。

(サイゴノ、チカラヲ、フリシボッタノ。ワタシノチカラハ、トテモトボシク、ケレド、イシキダケハ、ファニーノ、ソバニイタノ。ソシテ、ファニーノ、イノチガ、キレタシュンカン、アナタノコエガ、キコエタ)

「俺の声? 俺は何を……」

(タマシイダケハ、ズット、ソバニ)

「!」

(ダカラ、ワタシハ、ハナシカケタ。カノジョヲ、マモッテクレル、ト。アナタハ、タマシイニカケテ、トイッタワ。ダカラ、ワタシハ、サイゴノ、マリョクデ、ジカンヲ、モドシタノ)

 そうか、聞いていたのか。俺の最後の言葉を。俺の心からの言葉を。

 俺は白の魔女と目をあわす。儚げな、今にも消えてしまいそうな体。

「……じゃあ、今の君はどういう状態なんだ?」

(ムカシニ、モドッタカラ、スコシハ、カイフク、シテイタケレド、モトヨリハ、ハンブンホドノ、チカラシカ、ナカッタ。ソシテ、オナジヨウニ、クロノマジョニ、ミリョウノ、マホウトトモニ、マリョクモ、ウバワレタ。イマノ、ワタシハ、ヒトノカタチデ、アナタノ、ユメニ、デルノガ、セイイッパイ)

「やっぱり今回も、魅了の魔法は奪われてしまったのか」

 俺は彼女の言葉を噛み締める。今回も同じ、黒の魔女が魅了の魔法を手にしてしまった。

(ケレド、ワタシガ、ヨワッテイタカラ、ゼンカイホド、ツヨイ、ミリョウノマホウニハ、ナラナイワ。ハジクコトハ、デキルカモ)

「どうやって?」

(コノクニノ、キタニアル、カランザンニ、マホウヲ、ハジク、イズミガアルノ。ソノミズヲ、ノンダラ、ミリョウノマホウヲ、ハジキカエセルカモ)

 北のカラン山。確か中はかなり入り組んでいて入ったが最後、無事に出た者はいないとされている迷路山とも呼ばれている場所だ。そんな山に行くのは危険だが、魔法が効かなくなる水が手に入るなら、考える余地はあるな。

 俺は近い将来、カラン山に踏み込むであろう自分を想像する。けれど、ふと我に返る。

 前回の十六歳の体ならいざしらず、この七歳の体でそんな危険な山に入って無事に帰る事が、はたして可能かどうか……うん、無理だな。

 俺はいともあっさり諦める。もう少し鍛えてからでないと、無駄に命を落とすだけだ。なんのためにやり直している。俺はファニーを今回こそ幸せにしないといけないんだ。

 カラン山の話は一旦、横に置いておく事にする。

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