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009 電車

とりあえずしゅんにメール。戦術的な講評なんてできないので、ただ祝意を伝える。



「優勝、おめでとう!…っと。」



あまりに淡泊たんぱくな気もするが、明日も会うし、これくらいがちょうど良い。俊に恋人とのお付き合いが長く続くコツなんてことを聞いた時、そんなことを教えてもらった気がする。友人関係も、まあ、同じようなものだろう。



―――良いアドバイスをもらっているはずなんだけど…フラれっぱなしだな…。



なんだか自分でテンションを下げてしまったが、気を取り直して上を向く。


目線の先には時計。もう夕方の4時を回っていた。今からゲームセンターに繰り出す元気は持ち合わせていないので、今日は早めに休むことにしよう。なんちゃってプロゲーマー(仮)として、体調管理も仕事のうちなのだ。







翌朝、見事に寝坊。俊とは駅で落ち合うつもりだったのだが、何かを察してくれたのだろう、早めに電話をかけてくれた。俊の電話がなければ、大会参加は絶望的だったことだろう。



「いや、本当にごめん。助かった。」



なんとか予定していた電車に乗り込めたが、冷や汗もの。


あまり言い訳はしたくないのだが、本当に眠れなかったのだ。緊張感というか高揚感というか、大会のことを考えると感情がストップ高。久しぶりに抱き枕を引っ張り出してみたものの、効果はなかった。



「まあ、仕方ないさ。それにしても…寝ぐせすごいな、ふふっ。」



「いやー、寝付けなくてさ。って、本当に寝ぐせやばいな…。ま、まあ、心理戦的な?」



よくわからない返しをしてしまったが、俊に笑われるまでちっとも気づかなかった。車窓の反射で確認すると、某アニメの主人公みたいな髪型だ。そういえば毛布をかぶってみたり、ごろごろと寝返りを続けてみたり…。寝ぐせがひどくなっても文句は言えない夜だった。



「俺が対戦相手やったら、笑い止まらんかもしれん。」



まさか本当に心理戦が展開できるとは思わないが、恥ずかしいと思わなければ良い。ただ、さすがにマナーの問題がある。会場に着くまでにはなおしておこう。


ちなみに会場となるのは、隣町の巨大なゲームセンター。昨日案内をしっかり読むまで知らなかったのだが、ベスト16以降はステージ上で対戦となるらしい。おそらくそのあたりが壁になるだろう。もちろん優勝を目指しているので、ベスト16は軽く突破したいところ。



電車がスピードを落とす。隣町なので2駅。電車だとこんなに早いが、歩くとなるとかなりの距離。電車の偉大さを改めて痛感する。



『右側のドアが開きます。』



「よし、行こう!」



俺のカウンター無双が始まる!…かもしれない。

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