063 仕事
結果だけ見るのならば、俺の圧勝だった。ゲージでいえば、100対0。トップ選手が放った攻撃、その全てを躱しきった。
しかしその実は、何十倍の時間をかけても語りつくせない戦いだった。
強引にまとめるとすると、あれ以外のストーリーがない戦いだった。何度トップ選手と対戦したとしても、同じストーリーが紡がれるだろう。そして、その機械的な勝敗は、たった一撃。たった1回の攻撃によって振り分けられる。俺が《全て》を躱せるか否か。それだけ。
―――来年…楽しみだな。
俺の心はもう決まっている。どこまでやれるかはわからないけれど、この世界で生きていくことを決めた。ちょっと下世話な話になってしまうけれど、まあ、生活できるくらいの賞金をいただけた、というのも理由の一つ。大きい声では言わないけれど。
ただ、進学はしたいと思っている。母さんのおかげ…と言って良いかどうかは微妙なラインだけれど、その…悠美さんとの…将来…というか、そういうのを考えさせられて…というか。
あと、自分のことをもっと知りたくなった。反応チートだということは知っているけれど、それ以上の詳しいことは知らない。もしかしたら、この秘密が誰かの役に立つかもしれない。わからないけど。
ちょっと格好をつけるならば、夢ができた。医学か…。
「大樹、大樹。」
俊の声で、現実に引き戻される。
「あ、ごめんごめん。ちょっと考え事…。」
「物思いにふけり過ぎ。あと、それ俺のたい焼きなんだけど…。」
両手でたい焼きを握っていた。さっきまで右手に1つ、左手に1つだったはず。
「わっ!?ごめん。新しいの買ってくる。」
「いいよ。あんまりにも普通に食べるから、俺が数を間違ってるのかと思ったわ。」
さすがに申し訳なさすぎるので、100円玉で返しておいた。これは気をつけなければ。俊だから笑ってくれるが、基本的に失礼極まりない。
「じゃあ、そろそろ行こうか。」
俊に促され、ベンチから立ち上がる。今日はこの後、動画の撮影をする予定。午後からはテレビ番組の打ち合わせが入っている。もちろんこれが一過性の人気であることは、重々承知している。
―――まあ、FPSがもっと人気になってくれれば…御の字だよね。
それもまた、「プロ」の仕事なのだろう。そう思っている。




