060 好転
『なんとダイキ選手も星屑を使用っ!遠距離攻撃の撃ち合いかっ!?』
遠距離攻撃には、着弾までの時間がある。相手は技のモーション継続中なので、ガードは不可。タイミング的に回避もされないだろう。
問題は、無敵時間に被らないかどうか。
|秒針が止まって見える現象にも似た不思議な時間。
―――頼む…。
俺は今、技と技の間、そのわずかな時間にカットインをかけている。いくら反応チートとはいえ、ゲームシステムに介入できるわけではない。システムの処理順序によっては、この作戦、机上の空論と化してしまう。最後は運に頼らざるを得ないのだ。
次の瞬間、降り止まなかった雨に、わずかな光が差した。ジーン選手のコンボが止まる。
『ジーン選手、ここで初めての被弾!…これは…。』
呼吸を忘れて一気に距離をつめる。最短かつ最速で。余韻のなかを駆ける。
―――このまま…。
近づけまいと振るわれた攻撃を躱し、そのままこの試合初のカウンターへとつなげる。
『ダイキ選手、カウンターだーっ!距離をつめ、一気に流れを取り戻していく!』
ここまで来れば、あとは時間の問題だ。残り37秒。十分すぎる。
■
正直、あの「星屑」は賭けだった。
もし間隙を縫うことができず、ジーン選手のコンボが止められなかった場合、敗北の二文字を待つのみだった。ありえない状況まで想定し、システムをくみ上げてくれた人たちに感謝。
残り時間7秒。数えきれないほど見てきたモーション。成功と勝利を知らせる効果音が鳴り響いた。
『最後もカウンター。勝者…ダイキ選手っ!』
大逆転。
スタンディングオベーションに送られつつ、控室へと向かう。
―――次…決勝…。
嬉しさよりも疲れが先に立つ。決勝戦までは少し時間がある。控室で休もう。
■
控室。ソファに腰かける。疲れてはいたが、さすがに準決勝の様子は確認する。
―――ですよねぇ…。
まあ、トップ選手の圧勝。想定内と言えば想定内なのだが、世界大会の準決勝まできて揺るがないその強さ。絶対王者とはこういうものだ、それを見せつけられたかのような対戦だった。対戦時間、32秒。
ここで今まで気づかないふりをしてきた、悲しい事実に正対する。俺の対戦時間、長すぎ問題。まあ、カウンター戦術を採用している以上、避けられないことではあるのだが。
何が言いたいかと言うと、そう、疲れるのだ。そして決勝戦は順位決定戦の後。つまり、まあまあ時間がある。
―――というわけで、おやすみなさい。




