006 撮影
見上げると、空が茜色に染まっている。
「ありがと。付き合わせて悪かった。」
ゲームのお金はすべて俺が払ったとはいえ、半日は…さすがに申し訳ない気持ちになる。そういうことを気にするような仲ではないと思うのだが、親しき中にもなんとやら。
「いいよ。あ、これから動画撮るんだけど、ちょっと手伝ってもらっても良い?」
「もちろん、もちろん。」
家に帰っても一人。明日は日曜日だし、特に用事もない。
俊は最近カードゲームの動画をアップロードしている。カードゲームということは、そう、対戦相手が必要なのだ。
「よーし、今日はこのデッキでお願いね。」
俊の特製デッキを手渡される。今日もお金にものを言わせたとんでもない構成らしい。羨ましい限りなのだが、俊にとってこれは大切な仕事道具。仕事道具にこだわりを持つ、どんな職業にも言えることだと思う。
「うわぉ、キラカードばっかり。」
「あはは、やっぱり光ってるほうが格好良くない?」
いわゆる「映え」というやつか。
「ま、まあ。でも…お高いんでしょ?」
なんだか通販番組みたいなノリを始めてしまったが、苦笑いで流される。多分かなりの値段なのだろう。俊は、まあ、言ってしまえばお金持ち。高校生としては、という意味ではなく、一般的な意味で。
ただ、俺も動画投稿をしよう、とは正直ならない。なぜなら動画の裏側、言ってしまえば大変さを知っているから。
基本的に、10分の動画が10分で出来上がるわけではないのだ。たった10分、されど10分のなかに、とんでもない工夫とこだわりが詰め込まれている。そう、いわゆる「編集」という工程がある。コンマ数秒単位で効果音の位置を調整、字幕の大きさや色あるいはフォントの決定。こだわり続ければ終わりのない世界なのだ。
―――コンマ数秒を極めるってところは…カウンターと似てるかな。
「よし、じゃあ撮影始めるよん。」
俊がカメラを操作する。録画中のランプが点灯し、録画開始を知らせる電子音が鳴った。
「シュンカンゲームズへようこそ!本日は…」