059 相反
戦況は好転しない。
そもそも回避という行動は《後ろ向き》なのだ。距離を詰めることとは相反するに決まっている。これほど高レベルな連撃を回避し続けているだけでも、褒めてもらいたいくらい。
―――泣き言ばっかりは言ってられないな。
これは遠距離攻撃の評価を見誤った俺の責任。ただ、ここで反省ばかりしていても仕方がない。打開策を考えなければ。
『うーん。ダイキ選手、防戦一方。ジーン選手が着実に時間を削っていく!』
時は金なり。
まあ、考えるまでもなく、打開策は一つしか持ち合わせていない。ワシさんと俊、そして俺。練りに練った技構成。カウンターのみで勝ち上がってきたと言っても過言ではない俺にとって、技に頼るという稀有な瞬間が訪れようとしている。
―――問題はタイミングだよな…。
打開策があるにも関わらず、未だに使っていないのにはわけがある。最大の理由は、ジーン選手の遠距離攻撃、その密度が俺の想定をはるかにこえていたこと。そしてもう一つ、これも大きな理由。打開策について、俺の理解が圧倒的に不足していること。
『あっとっ!ここでジーン選手の星屑が、ダイキ選手を捉えたーっ!』
そこからバタバタと連撃を受けてしまう。急騰する会場のボルテージ。
―――ああっ、もうっ!
いつもなら当たり前のことが、思うようにいかなくなっている。いつもなら回避のみに集中すればよかった。回避さえできれば、あとは作業。ところが今回はもう一つ、タスクを抱えている。
打開策、それは「技と技の間に、俺の技を押し込むこと」だ。
実は俺の技構成、「星屑」が入っている。俊がもしもの保険として、すすめてくれたのだ。あと少し、どうしてもダメージを与えておきたいときの保険。さすがに初見で躱されることはないだろうという読みも込めて。
ただ、使い慣れている回避や通常攻撃とは、全くタイミングが違うのだ。そして見慣れている近距離攻撃とも違う。
―――結構まずい…。
1回。たった1回で良い。「星屑」を当てることができれば、距離を詰めることができる。距離が詰まればこっちのもの。「背水の狂焔」でステータスも上昇しているし、それこそ30秒もあれば逆転できる。
その1回が遠い。遠すぎる。
■
ジーン選手が使う「星屑」に集中する。もう、多少のダメージは仕方がない。最悪、ゲージが1でも残っていれば良い。
『ここで再び星屑がヒットォォッ!これはダイキ選手、さすがに厳しいか!?』
会場からどよめきにも似た声があがる。
―――見つけた…7フレーム目から10フレーム目の間。
技の終了間際、そこに存在する無敵時間を避け、次の攻撃に移るまでのわずかな隙。自分で言うのもなんだが、俺でなければ見つけることのできない間隙。
―――今っ!
ジーン選手が使った「星屑」のカットイン。それに遅れること、3フレーム。時間にして100分の5秒。
―――決まってくれ…。




