057 無敵
『対するは…攻撃こそ最大の防御、いや、防御こそ攻撃。無敵時間を巧みにあやつるその戦術…FPS界に新たな防御戦術を確立した天才!ジーン選手の入場ですっ!』
準決勝の対戦相手、ジーン選手。その戦術を一言で表現するならば、《完璧な防御》だ。相手の技を完全にいなしきって、技のストックで相手に有利をとっていく戦術。
最初聞いたときは、頭のなかにクエスチョンマークが飛び回った。いなすなんて剣術じゃあるまいし、そんなことできるのだろうかと思ったのだが、実はこのゲーム、システム的に絶対にダメージを受けない方法が存在している。
―――無敵時間…。
外的要素をシステム的に受け付けないわずかな時間のこと。まあ、要するに「誰にも邪魔させないぜタイム」といったところ。「春霞一閃」だと、刀を振っているタイミングがこれに当たる。
これが無くなると、超絶ウルトラ最終奥義をも通常攻撃ぺしっで防げる、なかなかにカオスな連打ゲームが誕生してしまう。それはそれで面白そうという興味はさておき、本来は攻撃を成立させるために設定されている無敵時間。防御という面でとらえると、これほどに完璧な方法はない。
―――でも、カウンター並みにシビアだよな…タイミング。
相手の技が着弾するタイミングに無敵時間を合わせる。技に関する正確な理解が不可欠であり、どちらかというと机上のお話に近いという印象。それを平然とやってのけるのだから、ジーン選手、この人もかなりヤバい。
―――まあ、俺には効かないけど。
無敵時間の活用は、あくまでも防御の技術。カウンターとは土俵が違う。
『さあ、準決勝第一試合はダイキ選手とジーン選手の対決ということになりました。解説のトムさん、どのような展開が予想されるでしょうか?』
『はい。ダイキ選手はこれまでの試合を見ても、カウンターを主体とした戦術をとるでしょう。一方のジーン選手ですが…そうですね、これは難しい。無敵時間による防御は、カウンターには影響しないので。』
『なるほど。となると、ジーン選手が対ダイキ選手用として、どのような戦術を編み出してくるのかに注目、ということですね。』
考えていたことを、ほとんど言われてしまった。さすがはプロ。
ちなみにこの時間、技を設定するために設けられている。さすがに決めてきているので、迷うようなことはない。
―――さて…そろそろか。
ジャッジスタッフの方が、画面や手もとの確認にみえた。手もとをうつすカメラに始まり、対戦データの即時分析まで、ありとあらゆる不正対策がとられている。そんなおおげさな、と思うところなのだが、お金がからむのでそうも言っていられない。あまり気にしないようにはしていたのだが、さすが世界大会。賞金の桁が違うのだ。
―――やばいやばい、集中。集中。
『準備がととのったようです。それでは参りましょう。FPS世界大会…準決勝…。レィディー…ファイッ!』
本話に登場する「無敵時間とカウンター」の設定についてですが、本文では記述をかなり省略しております(理論的な色が強く、作品のテンポになじまないと判断しました。)。最低限の内容は残しているつもりですが、説明不足な点があると思います。申し訳ありません。設定集として詳述する予定ですので、ご理解いただけますと幸いです。




