053 売上
「大樹ーっ!おめでとー!」
俊に祝ってもらえた。
「さすが、だいちゃん!」
母さんに抱きつかれた。
「感動した…。」
父さん、まさかの涙。
「これで明日からの売上が…ぐふふ…スポンサーやっててよかったっ!」
おっちゃん、お金に目がくらみかけている。
■
そんなこんなで無事に初戦突破。控室にいても暇なだけだし、関係者席に移動しても特に問題はない。次はカナさんの試合が始まるし、ここでみんなと観戦することにしよう。
『さあ、カウンターの興奮冷めやらぬところですが…このまま第二試合に移りましょう。』
「カナさんの相手選手…去年、準優勝した人じゃなかった?」
大会パンフレットの表紙、前回大会の写真に載っている人だ。FPSの動画を見まくっている俺にとって、画面の向こう側にいる存在。いわゆる有名人。後でサインもらおう。
「そうそう。まあ、組み合わせはランダムだからね…。こればかりは…。」
俊が少し残念そうな表情を浮かべる。もちろんカナさんはとてつもなく強いし、勝負は水物。下馬評なんてあてにならない。会場の雰囲気だって、カナさん応援団のがんばりにより優勢。
―――それでも…。
対戦系のゲーム、その勝敗は実力が九割九分。おっちゃんには悪いけど、俺とおっちゃんが何度対戦したとしても、俺が負けることはない。スポンサー様なので接待をしなければならないという、高度に大人的な事情が絡めばわからないが。
まあ、それはさておき、実力が反映されるからこそ、ゲームはおもしろいのだ。もちろん運要素の塊であるじゃんけんだって楽しいのだが、じゃんけんを何時間もというのは…さすがにつらいと思う。プレイングスキルが上達したり、おニューな装備を入手できたり、とんでもない戦略を思いついたり。成長する要素があるからこそ、熱中できる。
だからこそ、覆しがたい差というものが存在してしまうのだ。
『まずは今年度FPSポイントランキングトップ。圧倒的な知識に裏打ちされた戦略の数々。常に新作を追い求めるその姿勢は、まさにストーリーテラー。今宵の戦い…その1ページは勝利の色に染まるのか!我々は、新たな物語の読者となる…カナ選手の入場ですっ!』
和風と形容しても差し支えない音楽とともに、レッドカーペットに一筋の光がさす。そこに映えるは着物をアレンジしたような桜色の衣装。どこか落ち着きのある雰囲気が会場を覆う。
―――そうか…服ももう少し考えればよかったな…。
自分の足元に目をやりつつ、若干の後悔。動きやすい格好が一番と思い、ラフというかカジュアルな感じの服装だ。無論この服に問題はない。実用的だし。ただ、開会式の時も思ったのだが、はっきり言って浮いている。出場選手の皆さん、こだわりの服装なのだ。
―――まあ、ものは考えようか。
会場の皆さん、別にファッションショーを楽しみに来てくれているわけではない。ゲームが見たいのだ。だとすると、俺ができることはただ一つ。
『対するは…前回大会準優勝、FPSの世界に新たな分野を持ち込んだ男。それは高度な戦略であり、華麗な芸術でもある。確率の壁を超えるその妙技、再びこのステージを彩る!我々は既に彼の掌中かもしれない…トリック選手の入場ですっ!』




