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051 熱気

『さあ、いよいよFPS世界大会…第1戦の始まりだ!』




会場の熱量が上がる。音楽や照明が切り替わる様子は、まるで嵐の前の静けさと言ったところ。




『FPS大会初出場にして、日本大会優勝を飾った…彼の放つカウンターはもはや芸術の域。我々を魅了し、そして困惑させたそのスキル。ダイキのカウンター(ディーズカウンター)は世界の分厚い壁をも突き崩すのか!FPSに現れた若き新星、光り輝け!ダイキ選手の入場だーっ!』




いつもより体が軽く感じる。



花道の先には見慣れているはずの筐体。緊張感よりも高揚感が先に立ち、自然と歩が進む。会場からは割れんばかりの拍手と歓声が飛び交っている。




―――やっぱり緊張はしてるんかな…。




昨日リハーサルで見ていたはずなのに、会場を彩る飾りや照明を新鮮に感じてしまう。思考よりも身体が先に動いているような、不思議な感覚。




『対するは…こちらも世界大会初出場。プログラマーとして働く傍ら、プロゲーマー…そしてゲーム実況者としても活躍する天才。彼が解き明かす方程式…その先に勝利の文字は浮かぶのか!いや…すでに勝利の証明が終了しているのか!マイケル選手の入場だーっ!』




表情一つ変えずに歩むマイケルさん。スポンサー企業のイメージカラー、深紅の衣装に身を包むその姿は、内に秘めたる情熱を感じさせる。




―――むぅ…。




気迫で押し込まれてしまわないように、背筋を伸ばして胸を張る。俺は今、日本大会に出場したすべての選手を代表してこの場に立っている。驕ることはない。あるのは誇り。



握手。



席について深呼吸。




―――さあ…始めよう。




『観客のみんな…一瞬を見逃すな!…レディー…ファイッ!』











―――さて…どうくるか…。




(しゅん)から得た情報によれば、マイケルさんは、ヒットアンドアウェイを主体とした戦術、簡単に言ってしまえば、リスクを最小化する戦法をとってきたらしい。俺に対してこの戦術が有効であるかはさておき、俺には一つ予想している技がある。




―――…やっぱり来たっ!




画面が薄暗くなり、わずかに靄がかかった。この技を初めて受けたときは、相手の動きに集中していて、気づきもしなかった。しかし、今回は違う。ちゃんと備えている。




苦悶(くもん)(かすみ)…!』




対俺専用技とまで言われてしまった技。時間はかかれど体力ゲージを3分の1も削られてしまう。しかも回避不可という、俺にとっては厄介極まりない技。世界大会…一本勝負。自分で言うのもなんだが、俺を相手にしてこれを使わない手はない。



しかし、対策法は見つかった。



「苦悶の霞」は、対象を状態異常…端的に言ってしまえば「毒状態」にする技だ。回避不可である以上、毒状態になることは避けがたい事実。しかし、ワシさんの(ひらめ)きにより活路が開かれたのだ。




―――自分から状態異常になれば良いんですよ!




最初聞いたときは、何かの冗談かと思った。状態異常になりたくない、という話の行きついた先が、なぜ「自分から状態異常になる」なのか。



しかし、これが答えだった。

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