050 初日
世界大会初日。会場の舞台袖、関係者専用通路から会場内を覗く。
―――いよいよだ…。
世界大会ということで、父さんも有給とってかけつけてくれた。関係者席には、父さん、母さん、東のおっちゃん、そして俊。ギャラリーさんもすごい数で、正直言って、日本大会とは比べものにならない。
FPSがゲームの世界三大大会、その一角を担っているのは知っていたが、改めてその人気を思い知る。
ネットでいろいろと調べてみると、その人気の秘密は「無料プレイ」にあるらしい。日本に設置されている筐体は、1戦につき100円を投入しなければプレイできない。しかし、海外展開されている筐体は、基本プレイ無料。IPやスポンサー広告で収益を維持しており、課金的な要素はほとんどない。
―――日本でも無料にしてくれたら良いのに…。
まあ、そう思わないこともないが、これは経営判断。俺が口出せることではないのだが。
そのような気軽にプレイできる敷居の低さ、そして単純明快なルール。技の相性関係に起因したジャイアント・キリングが起こりやすい一方、最終的には経験値や技術がものを言う。初心者から熟練者まで、幅広い層に支持され続けて今日の地位を得ているそうだ。
―――ダイキ先生、感動しました!
こっちに来て以降、いろいろな方から声をかけられた。そのうちの一つ。とっても嬉しかったし、格好よくしなければとも思った。ちなみに英語だったので、俺の適当訳であることは否めないが。
今、俺はプロゲーマーとしてこの場に立つ。もちろん大量のスポンサーがつくトッププロと比べれば、吹けば飛ぶようなレベルでしかない。ただ、それはギャラリーさんには関係のない話なのだ。いかにして勝つか。真剣勝負のなかから、想像を超えるエンターテインメントをお届けしなければならない。それがプロ。
柄にもないことを考えてしまったが、せっかくなら足を運んでくださったギャラリーさんに喜んでもらいたいのだ。一人のゲーマーとして。
―――さてと…そろそろ戻るか。
試合開始まで少しあるので、控室でうろうろ。
「ダイキ選手、まもなく試合開始です。ステージへお願いします。」
「はい。」
緊張感はほとんどない。語彙が不足して表現できないが、一番近い言葉を探すならば、ワクワク感が心を覆っている。果たしてカウンターは、世界トップクラスにも通用するのか。そしてトッププロはどんな対策を講じてくるのか。
―――さあ…1フレームの世界へ。




