005 感動
「俊、よろしく。」
「おう。」
おっちゃんのゲームセンターにはFPSが置いていないため、隣町までやってきた。やはり人気のゲームらしく、ギャラリーさんが結構いる。予選会で当たる相手がいるかもしれないので、あまり手の内をさらしたくはない。今日の目的は、カウンターが決められるかどうかの確認と、そもそもの操作方法の確認だ。
俺も俊も、ネット記事に載っていた「ティアワン」の技構成にしている。まあ、最も使われているとされる構成なので、強いと信じたい。
操作方法は普通だった。ボタンを押せば、技が出る。スティックを動かせば、キャラクターが動く。画面右上には体力ゲージがあり、これが0になると負けになる。
「じゃあ、通常攻撃から頼む。」
俊のキャラクターが通常攻撃という名の右ストレートを繰り出した。当たらない距離でうってもらったが、なんとかなりそうだ。
キャラクターの間合いに入る。緊張の一瞬。全神経を集中させ、相手キャラの動きを見る。右腕がわずかに動いた。
―――今っ!
「おっしゃい!」
綺麗にカウンターが決まったのだが、なぜか俊が喜んでいる。
「おー、いけた。」
カウンターには特殊なエフェクトが付いており、見た目華やか。もちろん攻撃力も華やかで、通常攻撃の1.5倍になる。
そしてこのゲームには、コンボに応じて攻撃力が上昇するというベネフィットもある。俺のキャラクター頭上に「1COMBO」という表示が現れた。コンボによる上昇率は微々たるものだが、塵も積もればなんとやら。
「じゃあ、次は技を頼む。」
通常攻撃に対応できることはわかった。問題は技への対応だ。
「ほいよ。それっ。」
俊の操作に呼応して、キャラクターの持つ大剣が炎を纏う。「炎陽」と名付けられたこの技は、使用率1位の技らしい。攻撃力にブーストをかけ、相手のガードを突き破る効果を持つ。他の技に比べると大変にシンプルだが、それが良い。それが強み。
「おいしょ!って…あれ?」
見事に吹っ飛ばされてしまった。
技には通常攻撃と異なり、少し派手な演出が加えられている。その分、タイミングがつかみづらかった。
―――ちょっと早かったか…。
一度入力すると所定の動作が終わるまで、訂正したりカットインしたりすることはできない。回避のタイミングをミスすれば、今のように直撃をくらう。まさにカウンターは諸刃の剣。
こればかりは若干の慣れが必要だ。攻撃前の演出に惑わされて、本体を見逃してしまう。覚えなければならないこと、結構多いようだ。
「すまん、もう一回。…俊?おーい?」
反応がない。まるでただの人形のようだ。
「大樹に…初めてダメージ与えられた…マジ感動…。」
俊が惚けてしまっている。
「…。」
感動するようなことかよ、とツッコミを入れたいところなのだが、感性は十人十色。多様性は受け入れるポリシーなのだ。待つしかない。そうしないと俺の連勝記録の存在が危うい。ゲームの連勝記録、俺にとってはプライド。しかし、興味のない人からしてみれば、まあ、どうでも良いことなのだ…悲しいけど。