049 未来
「ゆみちゃんだっけ。良い子じゃない!」
母さんにそう言ってもらえるのはうれしいのだが、素直に喜べない。なぜだろう。
「あの…母さん。いきなり結婚の話は…。」
「ちょっと早かったかしら?」
ちょっとどころではない。俺にも計画というものがあるのだ。
「でも、結婚するんでしょ?」
「いや…まだ18だし。悠美さん、17だし…。付き合ってまだ1か月も経ってないし…。」
もちろん将来的には結婚したい。いろいろと障壁がなければ、今日にでも結婚したい。それなのに、できない理由がすらすらと出てくる虚しさ。
「好きなんでしょ?好きどうしで結婚できるなんて、最高じゃない。」
「そうだけど…。」
「あんまりうだうだしてると、他の人にとられちゃうわよ。あんなに良いこ。」
それは否定できない。自分で言うのは悲しいが、俺なんかを好きになってくれるなんて、奇跡なんじゃないかと思うほど。
「そ…それは…。」
「ま、当人同士の気持ちが一番大事だからね。母さんは大賛成だから。」
「は、はあ。ありがとう…ございます。」
久しぶりに会った母さんと、こんな会話をすることになるとは。まあ、結果的にはありがたかったのかもしれない。現に、父さんにはまだ伝えられていないのだ。悠美さんとのこと。
腕時計に目をやるなり、そのまま社用車に乗り込む母さん。どうやら仕事の途中だったらしい。たまたま俺を見つけたということか。なんという偶然。
「母さん。これ、大会のチケット。」
世界大会のパンフレットと関係者専用チケットを手渡す。
「ありがとう。えーっとね、この後は会議があるから、一旦会社に戻って…17時くらいには退社できると思う。」
「そっか。俺、大会参加の手続きとかあるから、また電話するよ。」
「オッケー。じゃあ、気をつけてね。」
颯爽と走り出す車に手を振り、再び会場へと歩を進めるのだった。




