047 島国
俺は今、空を飛んでいる。
もちろん浮遊の超能力に目覚めたとか、異世界に転移して魔法が使えるようになったとか、そういうわけではない。飛行機に乗っている。行き先は大海原に浮かぶ島国、目的はFPS世界大会への参加だ。
あと、大きな目的がもう一つ。
―――母さんに会うの、久しぶりだな。
世界大会が開催される国、母さんの出張先だった。電話で話したりはしているものの、実際に会うのは久しぶり。半年…いや、もう一年ぶりくらい。
―――何だか…緊張する。
不思議な感覚だ。もちろんうれしい気持ちはあるのだけど、なんだろう、よくわからない感覚が胸を覆っている。世界大会への緊張感も相まって、信じられないほどに背筋が伸びている。
「大樹…。」
「ん?俊、どうしたの?」
俊が苦虫を嚙み潰したような表情で、こちらを見ている。より正確に言うならば、窓が視界に入らないよう、顔を傾けている。
「だ、大丈夫…?」
「…。」
そういえばこの表情、見覚えがある。かなり昔、俊と亜美が付き合う前の話。俺が柄にもなく気をきかせて、俊と亜美を二人っきりにしてあげようと目論んだことがある。場所は遊園地。ここはベタにいこうと観覧車。しかし、俊の完全拒否により、なぜか俺と亜美が観覧車を一周。
俊はかたくなに言わないのだが、おそらく高いところが苦手なのだ。そういう俺も苦手で、観覧車では終始無言を貫くという離れわざを披露。悠美さんとのデート…どうしよう。
「アイマスク…あるよ。」
効果があるか不明だが、いろいろと備えはしてきたつもり。世界大会を前にして、テンションを暴落させるわけにもいかない。
「…ありがとう。」
出だしから不安が重なるが、苦手なものはどうしようもない。慣れとかそういう次元の話ではないし、そもそも無理をすることでもないのだ。無理なものは避ければよい。これがカウンターの真骨頂。
―――あれ…これって、帰りも…。
大変なことに気がついてしまった。誰か、某有名漫画に登場するドアを作ってください。できれば配送料は無料で。




