046 発見
出だしからいろいろとあったが、撮影の方は無事にスタートした。内容はもちろん全国大会の振り返り。俊が進行役となり、ワシさんと俺の対談形式となる予定だ。
「さて、本日は…なんと!FPS全国大会優勝者、ダイキ選手にお越しいただきましたー!」
改めてそう紹介されると、やはり照れる。照れ隠しに頭をペコペコと下げる。
「さらにさらに、今回は、皆さんご存知FPSの兄貴こと、ワシさんにもご参加いただきまーす!初コラボです!よろしくお願いします!」
「ワシです。よろしくお願いします!」
ワシさん、FPSの兄貴なんて二つ名をお持ちなのか。知らなかった。やっぱり俺もほしい、二つ名。
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「はい…オッケーでーす。」
撮影終了。時間にして1時間ほどだろうか。
「ありがとうございましたー。」
この後は映像の確認と、編集作業が待っているらしい。俊もワシさんも、ここからが大変。ただ、編集準備が始まる前に、せっかくなのでワシさんに聞いておきたいことがある。
「あの、実はワシさんにお伺いしたいことがありまして…。」
俊には申し訳ないけれど、俺にとってはこちらの方が本題に近い。
「はい。何でしょうか?」
「決勝のときにカナさんが使った技、苦悶の霞についてなんですけど…。あの技をかわすことってできないんでしょうか?」
いろいろとネットで調べてはみたものの、解決策は見つからなかった。かわせなかったとしても「苦悶の霞」だけで倒されることはない。残りの攻撃を全てカウンターしていけば良いのだが、体力ゲージが削られているというのは、それだけでも結構なプレッシャーがかかる。
―――ダメもとではあるけど…もし解決策があるなら…。
一縷の望みとはまさにこのこと。ワシさんがかなりの古参プレイヤーであることは知っている。「苦悶の霞」は最初期に導入された技だそうなので、当時の事情を教えてもらえれば、何かの糸口がつかめるかもしれない。
「うーん…。かわすのは不可能ですね。…でも、ダイキ選手の場合は…いや、無理ですね。技範囲が全体ですから。」
「やっぱりそうですか…。」
ネットでも「対ダイキ先生用最終兵器がとうとう見つかる!」なんて書かれているほどなので、わかってはいた。
「そうそう、そういえば、何で苦悶の霞ってあんまり使われていないんですか?だって、問答無用で3分の1も体力ゲージ飛ばせるなんて…使わない手はないと思うんですけど…?」
カットインした俊の疑問はもっともだ。俺も最初はそう思っていた。全国大会出場レベル(俺を除く。)の選手たちが、「苦悶の霞」の存在を知らなかったとは考えづらい。とすれば使われない理由があるわけで、それはある数字を見ると明白になる。
「俊、カナさんの準決勝と決勝を見比べて、何か違うところない?」
意地悪をしているわけではないが、ちょっとクイズでも出してみたい気分なのだ。
「お、ダイキ先生からクイズですか。…うーん…と?…戦術が違うのはカナ選手の特徴だし…。あ、わかった!タイムだ!タイムが違います、先生!」
余計なことをしなければよかった。「先生」呼びでいじり倒されてしまう。まあ、気をとりなおして。
「…正解。準決勝が1分かかってなくて、決勝は2分ごえ。」
2倍以上の差がある。その差は何がうんだかと言えば、「苦悶の霞」なのだ。「苦悶の霞」が一瞬で3分の1を削りとる技であれば、誰もが使う最強技になったことだろう。もちろん、そうはなっていない。理由は単純。
継続的なダメージであるため、いかんせん、時間がかかるのだ。その時間があれば、普通に「炎陽」を使えば良い。
「そうか…ダイキ先生ならともかく、普通の人は炎陽なんてかわせないし。」
俊に「普通じゃない人」認定をされてしまったことはさておき、その通り。だから対戦では全く使われていない。格闘ゲームで時間をかけることは、倒されるリスクを増加させることに等しい。
「そうなんです。だからこそダイキ選手《専用》技なんて呼ばれてるんですよ。」
「俺にしか使う意味ないからね。」
「なるほど、なるほど。」
話がちょっとそれてしまったが、これが良い方向に転がったらしい。
「あっ!思いつきましたよ、ダイキ先生!」
「えっ!?本当ですか!」
棚から牡丹餅。




