042 解説
『さて、ここからは全国大会振り返りパートです!ゲストは今大会優勝者ダイキ選手!』
「よろしくお願いします。」
会場から割れんばかりの拍手。とっても嬉しい。
『そして準優勝者カナ選手!』
「お願いします。」
再び割れんばかりの拍手。今回はファンの方々だろうか、声援も追加されている。何だか羨ましい。
そのまま紹介が続く。撮影に参加しているのは、ベスト4進出者と結城社長、開発の遠井さん、今大会の解説をつとめてくださった方などなど。話題は当然ながら、今大会での試合についてだ。
『まずはやはり決勝戦ですね。決勝戦から振り返っていきましょう!』
背後のスクリーンに、決勝戦の映像が流される。ちなみに俺の前に設置されているモニターにも、同じ映像が流れている。
―――うわ…俺、こんな表情してたんかい…。
「あ、やばい!ピンチ!」を絵に描いたらこうなる、そんな表情。これでは俊に心を読まれるわけだ。
『まずはカナ選手が放った状態異常攻撃…苦悶の霞ですね。先ほど実戦での使用回数を確認したところ、今年度の集計で、わずかに2回しか使われていないそうです。全世界で2回ですからね。カナ選手、この技を出してきた意図、どのあたりにあるのでしょうか?』
全世界で2回…そりゃ知らないわけだ。
「えっと…ダイキ選手はカウンター主体なので、まずはこっちが優位をとらなきゃ…と思いまして。はい。」
『なるほど。主導権争いの一手…ということですかね?』
「はい。ダメージ量の関係で滅多に使われていない技ですし、意表を突く目的もありました。」
『確かに苦悶の霞で与えられるダメージ、炎陽ならば一発で出せますもんね。これを受けてダイキ選手、どうでしたか?』
「見事に意表を突かれました。」
会場から笑いが起きる。ちょうど、俺の顔のドアップ。しかも「やばい!」というときの表情。恥ずかしい。
『その時の表情ですね。』
「あはは…はい。ずっとノーダメージでこれていたので、かなり焦りました。それに不勉強で苦悶の霞のことを良く知らなくて…いつまで続くんだろうってひやひやしてました。」
『そんな状況のダイキ選手にさらなる脅威。カナ選手の連続攻撃が始まるわけですが、これはプラン通りの展開だったのでしょうか?』
「はい。ダイキ選手のプレイングスキルを考えると、回避されることは想定内でした。普通、春霞一閃がかわされることなんてないんですけど…。」
『その後に続いた桜吹雪からの霰覆し。この霰覆しがいわばフェイントだったわけですが、このあたりはどうでしょうか?』
「普通に霰覆しをうってもかわされることはわかっていたので、おとりに使うことを考えました。ちょっと贅沢すぎる使い方ですけど、一撃入ればそのまま押し込める…と思っていたので。」
『その一撃は見事に決まり、ダイキ選手は今大会…地方大会から数えて初めて技を受けるということになりました。これはかなりの衝撃だったのではないでしょうか?』
「うまく掌の上で転がされちゃって…。なんというか、経験の差を痛感しました。」
『ダイキ選手、今大会初出場ですもんね。これでかなり形勢が傾いたかに思えましたが、そこからダイキ選手の反撃が始まります。』
スクリーンにそのシーンが流される。桜吹雪の途中で、再び一時停止が入った。
『ここで誰しもが残花の雫を予想していたと思うのですが、カナ選手はいかがでしたか?』
「はい。ダイキ選手の技構成がわからなかったので、ここは私のプレイングミスです。残花の雫が考えられる場面ですけど、安全にガードするべきでした。」
『そこが勝負を分けたんですね。解説の長峰さん。ここの判断は、どう考えられますか?』
「うーん。結果的にはカナ選手のおっしゃる通り、あそこの判断が全てなわけですが…。あの状態ではベストな判断だったと思います。ダイキ選手が定石通りに残花の雫につなげていれば、カナ選手の勝利ですし。これはダイキ選手の作戦が素晴らしかった、そういうことだと思います。」
普通に戦っては、俺に勝ち目などない。技と技でぶつかり合ったら、軽く吹き飛ばされるだけ。
『そこに来ての回避…いや…なんど見てもしびれるシーンですね。桜吹雪をうつタイミングでは想定されていたと思うのですが、これは用意されていたプランなのでしょうか?』
「いや…その場の思い付きです。結構、賭けでした。普通にガードされてしまったら打つ手なしでしたし。」
「機械的な判定ですが、システム上、ダイキ選手が残花の雫を使っていた場合、カナ選手の勝ちだったようです。」
遠井さんからの解説が入る。想像以上に薄氷を踏んでいたようだ。
『なるほど…まさに紙一重の勝負だったということですね。ありがとうございます。では、続いて準決勝を見ていきましょう。』




