038 定石
『ここでダイキ選手、桜吹雪!対するカナ選手、ガードで耐えますが…これは耐えきれない!』
ガードの許容量を突破し、4撃目からダメージが入る。この間、任意の操作はできない。問題は最後の一撃のあと。
―――賭けだけど…いけるはず!
今まで多くの試合を見てきた。付け焼刃だけど、さまざまな戦術を見てきた。
技には組み合わせると有効なものが数多く存在している。さっき俺が「霰覆し」を予想したように、有名な組み合わせがいくつかあり、多くのFPSプレイヤーが採用している。だからこそ起点となる技がくると、その次に備え、対応する。それはある種、反射に近いものだと思う。
有名ということは強力ということ。
自分で言うのもなんだが、俺だから「霰覆し」の初撃をかわせただけで、普通ならばあの技の組み合わせで持っていかれている。それほどに確立されたコンボなのだ。
『カナ選手に連続ダメージ!再び戦況がひっくり返る!』
準々決勝で俺が受けたのも、有名なコンボ。決まればほぼ試合を決定づけるもので、かなり強力だ。
「桜吹雪」が来たら、次は「残花の雫」。
「霰覆し」と続く場合もあるが、あれははっきり言って対俺戦法に過ぎない。ただ、コンボには隙もある。完璧な組み合わせなど存在せず、もし存在していたとしても、運営によって調整が入る。桜コンボの弱点は「残花の雫」。コンボ全体で見たとき、ダメージ量の実に7割を構成しているのだ。
だからこそ、そこをピンポイントで止めるのがセオリー。
方法は主に二つ。まずは、あえて「桜吹雪」を受けきり、ガードを温存する対応。ダメージを受けるが、確実に「残花の雫」をガードでかわすことができる。ローリスクローリターンの対応。そしてもう一つが、今、カナさんがとっている対応だ。
「桜吹雪」を途中までガードし、ダメージを最低限に減らす対応。「残花の雫」に対しては、発動前に攻撃を当てることで、発動自体をキャンセルさせるのだ。「桜吹雪」に連続しなければ使えない、「残花の雫」の特徴を利用した方法だ。こちらはハイリスクハイリターン。返す刀でダメージを与えることができるし、主導権を奪い返すことができる。
カナさんが操るキャラクターが右ストレートの構え。右腕が動き、肘が体側へと近づいていく。
―――…かかった。
俺はその右ストレートを、ただ、回避した。
「え…?」
歓声のわずかな間隙に、驚きの声がまじった。
『ここで決まったーっ!ダイキ選手の十八番、カウンター!全国大会優勝は…ダイキ選手っ!コーングラッチュレイションッ!』




