表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/64

036 焦燥

決勝戦が始まった。ルールは今までと何も変わらない。緊迫の2分30秒が幕を開けた。





『さあ、始まりました、決勝戦。まずは両者、様子を(うかが)います。』





達人たつじん間合(まあ)いというやつだろうか。カナさんは仕掛けてこない。俺はカウンターしか手がないので仕方がないことなのだが。


ただ、このまま時間が過ぎていくと、少し困ったことになる。お互いにダメージが与えられないのだ。それでは決着がつかなくなってしまうので、一定時間攻撃可能圏内から離れると、ダメージを受けるという設定がされている。つまり、相手の間合いに入らないと、どんどんとダメージを受けていくということなのだ。


このペナルティ的な要素は、リードしている側にかせられるもの。現状ではどちらも体力満タンなので、両者ともにダメージを受けることとなる。




―――うう…このままだと俺のノーダメージ記録が…。




突っ込むべきかどうか逡巡(しゅんじゅん)していると、初めて見るカットインが現れた。





苦悶(くもん)(かすみ)…!』





主要な技は全て見てきたはずなのだが、初見。技名的に攻撃系だとは思うのだが、攻撃のモーションはない。




―――ん…?何だったんだろう…?




疑問が思考を覆った瞬間、体力ゲージがわずかに減った。




「えっ…?」




思わず声がもれてしまう。攻撃を受けた様子はない。疑問におおわれた思考が、疑問に支配される。何が起きたのか。


考えられる原因は「苦悶の霞」という技だ。ただ、俺はその答えを知らない。必死で画面を探すと、俺のキャラクターについている、一つのアイコンに気づいた。





『おーっと!これは珍しい。カナ選手、苦悶の霞を使用しました。』



『状態異常ですね。いやー、私も久しぶりに見ましたよ。これは回避できませんからね。』





実況さんに解説さんが合いの手を入れる。


答えはまさかの状態異常。10秒ごとに、継続したダメージが入ってくる。まさかこんな技があったとは…。




―――落ち着け…状態異常で10秒ごと…削り取られることはないな。ないけど…このままだと。




時間切れで俺の負け。打開策を見つけなければならないが、カウンター以外に俺の打てる手はない。設定している技だって、一度も使ったことがないのだ。


どうすることもできないまま、時間だけが過ぎていく。会場からはどよめきの声が上がっているが、これも立派な戦術だ。対応できない俺が悪い。





『さあ、これで3分の1のダメージが入る。問題はここから。状態異常ではこれ以上ダメージを稼げない。ストーリーテラーがつづるのはどんな展開なのか!?』





どうやら3分の1以上のダメージは受けないらしい。さっきまでピコピコしていた、状態異常を知らせるアイコンも消えている。何とか立て直さなければ。


そのわずかな安堵(あんど)感を狙いすましたかのように、「春霞一閃(しゅんかいっせん)」のカットイン。




―――やべっ!




わずかに反応が遅れてしまった。回避はできたものの、カウンターまでつなげることができない。





『散れ…桜吹雪!』





カナさんの連続攻撃。ここまでくるとさすがに予想がつく。最後の一撃は、間違いなく「霰覆(あられこぼ)し」だ。準々決勝と同じ展開。あの時の(あせ)りを見透(みす)かされていたのだ。


思考が追い付いてカウンターをするが、残念ながら「桜吹雪」には吹っ飛ばし無効の追加効果がある。ここはかわしきれるとしても、次からが問題。





『線上に揺蕩(たゆた)う粒…霰覆(あられこぼ)し!』





―――ですよねっ!





狙うは初撃のみ。これをカウンターできれば、五分(ごぶ)に戻すことができる。最初の状態異常攻撃は想定外だったが、これより先はいつも通り。


回避のコマンドを入力した瞬間。




―――あれ…?




「霰覆し」に割り込みがかけられ、別の技が放たれる。





『春霞一閃だー!ダイキ選手、初めてまともなダメージを受ける!』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ