035 頂点
むかえた準決勝、結果としてはノーダメージを継続できた。ただ…。
―――ひえーっ…怖かった…。
準決勝の相手は超攻撃型の戦術だった。攻撃力強化を乗せて「炎陽」を連発。一発受ければ一気に形成が逆転する。そんな綱渡りの一戦。
しかもテンポがやばい。人は基本的に調和的なリズムを好むが、それをいとも簡単に壊してきたのだ。なんというか、攻撃が不定期。見て備えているとはいえ、何度も攻撃前に回避してしまいそうになった。
最後の一目盛りを吹き飛ばすまで、緊張の連続だった。決勝が始まるまで、あと数分。とりあえず水を一口。
「よし、落ち着いた。がんばろ。」
入場口にひかえ、前を見つめる。決勝の相手は俊の予想通り、カナさん。どんな戦術が飛び出てくるのか、楽しみだ。ちなみにカナさん、準々決勝、準決勝ともに、相手を圧倒していた。しかも全く違う戦術で。
―――まず考えられるのは…。
「春霞一閃」をはじめとするカウンターしづらい技を連発。これはこれで厄介なのだが、対応しきれないわけではない。決勝の緊張で何発か受けてしまうかもしれないが、ダメージ量が少ない分、持っていかれることはないと思う。
確率は少ないと思うが、「炎陽」や「雷鳴」などを組み合わせて、高火力で押し切ってくることも考えられる。現に、準々決勝でカナさんがこの戦術を採用していた。
―――いずれにせよ…出たとこ勝負だな。
考えたところでやることは変わらない。俺にはカウンターがある。そしてカウンターしかないのだ。
■
『お待たせいたしました。いよいよ決勝戦です!
まずは前回大会優勝者にして、世界4位の実力者…。圧倒的な強さと華麗な組み立てから、ストーリーテラーの二つ名を持つ。今大会でも再び優勝という栄冠に輝くのか。カナ選手の入場ですっ!』
重低音が特徴的な音楽が響き始め、会場のボルテージがあがっていく。
―――それにしても…二つ名…格好良いな。
俺にも誰か二つ名とかつけてくれないだろうか。ダイキ先生でもうれしいのだが、こう、名前の前につく感じに憧れる。ストーリーテラーのカナさん的な感じで、〇〇のダイキみたいのが良いな。もし優勝できたら、俊に考えてもらおう。
『続いて今大会の注目選手、その勢いはとうとう決勝の舞台へと駆け上がる。地方大会から続くノーダメージ戦闘、計算しつくされたカウンターは絶対王者のストーリーを崩すのか。ダイキ選手の入場ですっ!』
さっきとはうってかわって、ポップな感じの音楽が流れ始める。これ、シュンカンゲームズのオープニング曲。スポンサー様の強いご意向で、登場曲にねじ込まれた。
最初はどうしようかと思っていたが、結果的にこの曲で助かった。慣れ親しんだ曲だからか、緊張がちょうど良い具合にとけていく。
―――みんな見てくれているかな?
父さん、母さんは見てくれている。さっき応援のメールをくれたので、間違いない。東のおっちゃんもパブリックビューイングを開いてくれているので、観戦してくれているはず。悠美さんは…まあ、模試中なのでさすがに無理か。
『両者、準備はよろしいでしょうか?』
「…。」
無言で頷く。数秒の静寂。
『それでは参りましょう。FPS全国大会…決勝戦!レディーファイッ!』




