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35/64

035 頂点

むかえた準決勝、結果としてはノーダメージを継続できた。ただ…。




―――ひえーっ…怖かった…。




準決勝の相手は超攻撃型の戦術だった。攻撃力強化を乗せて「炎陽(えんよう)」を連発。一発受ければ一気に形成が逆転する。そんな綱渡りの一戦。


しかもテンポがやばい。人は基本的に調和的なリズムを好むが、それをいとも簡単に壊してきたのだ。なんというか、攻撃が不定期。見て備えているとはいえ、何度も攻撃前に回避してしまいそうになった。


最後の一目盛りを吹き飛ばすまで、緊張の連続だった。決勝が始まるまで、あと数分。とりあえず水を一口。




「よし、落ち着いた。がんばろ。」




入場口にひかえ、前を見つめる。決勝の相手はしゅんの予想通り、カナさん。どんな戦術が飛び出てくるのか、楽しみだ。ちなみにカナさん、準々決勝、準決勝ともに、相手を圧倒していた。しかも全く違う戦術で。




―――まず考えられるのは…。




春霞一閃(しゅんかいっせん)」をはじめとするカウンターしづらい技を連発。これはこれで厄介やっかいなのだが、対応しきれないわけではない。決勝の緊張で何発か受けてしまうかもしれないが、ダメージ量が少ない分、持っていかれることはないと思う。


確率は少ないと思うが、「炎陽(えんよう)」や「雷鳴(らいめい)」などを組み合わせて、高火力で押し切ってくることも考えられる。現に、準々決勝でカナさんがこの戦術を採用していた。




―――いずれにせよ…出たとこ勝負だな。




考えたところでやることは変わらない。俺にはカウンターがある。そしてカウンターしかないのだ。











『お待たせいたしました。いよいよ決勝戦です!


まずは前回大会優勝者にして、世界4位の実力者…。圧倒的な強さと華麗な組み立てから、ストーリーテラーの二つ名を持つ。今大会でも再び優勝という栄冠に輝くのか。カナ選手の入場ですっ!』




重低音じゅうていおんが特徴的な音楽が響き始め、会場のボルテージがあがっていく。




―――それにしても…二つ名…格好良いな。




俺にも誰か二つ名とかつけてくれないだろうか。ダイキ先生でもうれしいのだが、こう、名前の前につく感じに憧れる。ストーリーテラーのカナさん的な感じで、〇〇のダイキみたいのが良いな。もし優勝できたら、俊に考えてもらおう。




『続いて今大会の注目選手、その勢いはとうとう決勝の舞台へと駆け上がる。地方大会から続くノーダメージ戦闘、計算しつくされたカウンターは絶対王者のストーリーを崩すのか。ダイキ選手の入場ですっ!』




さっきとはうってかわって、ポップな感じの音楽が流れ始める。これ、シュンカンゲームズのオープニング曲。スポンサー様の強いご意向で、登場曲にねじ込まれた。


最初はどうしようかと思っていたが、結果的にこの曲で助かった。慣れ親しんだ曲だからか、緊張がちょうど良い具合にとけていく。




―――みんな見てくれているかな?




父さん、母さんは見てくれている。さっき応援のメールをくれたので、間違いない。(あずま)のおっちゃんもパブリックビューイングを開いてくれているので、観戦してくれているはず。悠美(ゆみ)さんは…まあ、模試中なのでさすがに無理か。




『両者、準備はよろしいでしょうか?』




「…。」




無言でうなずく。数秒の静寂せいじゃく




『それでは参りましょう。FPS全国大会…決勝戦!レディーファイッ!』

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