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33/64

033 密度

『それでは第一試合を始めます。…前回大会ベスト4…密度(みつど)の高い連撃は、まるで春一番(はるいちばん)に舞う花のごとし。今年も画面を桜色に染めるのか!ゲン選手の入場ですっ!』





格闘技の大会さながらの演出が加えられている。スポットライトにらされて歩を進めるのは、なんと全国大会最年少出場記録を持つ中学生。ここまで勝ち上がっているということは、相当な実力者。大人げないなんて言ってられないので、最初から全力でいこう。そもそも俺も子ども。




―――よーし…頑張るぞ!





『…対するは…大会初出場にして優勝候補筆頭…全てをかわし、全てを打ち砕く…彼のカウンターは新時代の幕開けなのか!ダイキ選手の入場ですっ!』





とんでもない紹介をされてしまったが、ここまで来れた以上、目指すは優勝のみ。おっちゃんの海外でサーフィン計画も、今日の俺にかかっている。





『では試合開始です…レディーファイッ!』










「お願いします!」




ベスト8からは、一試合ごとに技の再設定が可能となっている。大会一日目のデータを俊がまとめてくれたが、これはあくまでも参考資料。ゲン選手は紹介にもあった通り、連撃戦術。再使用までにかかる時間の少ない技を中心として、密度で押し切ってくるスタイルだ。




―――俺にとっては好都合だけど…。




相手の攻撃回数が多ければ、こちらのカウンターの回数も増える。おそらく決着まで、そんなに時間はかからないはずだ。





氷解(ひょうかい)の訪れ…』





あわい光が広がる独特のカットイン。開幕早々、やはりこの技から入ってきた。





桃花水(とうかいすい)!』





「桃花水」は、技の再使用までにかかる時間を短縮する効果がある。どうやら今までと同じ戦術でくるらしい。対戦ゲームは得意とくいを押し付けた方に分がある。特に一瞬の判断が求められる格闘系ゲームならなおのこと。




『でたー!ゲン選手の十八番、桃花水!1分間のラッシュが始まる!』




―――むむむ…。




「桃花水」の効果持続時間は1分。ここから1分間は相手が先手をとってくる。耐えきらなければ。




―――まあ…どっちみちカウンターだから、後手に回るんだけど。





『舞えっ!桜吹雪!』





始まった5連撃。一つひとつのダメージは大きくないが、一つ受けてしまうと残りの回避ができない。攻撃を受けて吹っ飛ばされている間は、任意の行動がとれないのだ。初撃の回避が重要。




―――桜が舞って…ここっ!




一太刀ひとたち目、桜の花びらがやいばに変わる瞬間をとらえる。完璧なタイミング、そのままカウンターで割り込んでいく。桜吹雪の連撃中は、吹っ飛ばし無効が働いている。ダメージは与えられるのだが、技を止めることができない。そのまま、二、三、四、五と連撃をさばいていく。





『な、なんとーっ!桜吹雪の5連撃を全てカウンター!これはかなりのダメージだっ!』





主導権しゅどうけんは握った。後は回避だけでも勝てるが、この状態を2分半維持できる余裕はない。このまま押し切る。





()れ…残花(ざんか)(しずく)!』





大技がとんできた。桜吹雪につなげることができる、専用技だ。桜吹雪で命中した攻撃数に応じてダメージが上昇する。全てかわした俺にとって、そんなに脅威ではない。




―――右が前に出て…開いた!ここで回避…からの…っ!




大技であるほどタイミングは読みやすい。動きが大きいので、わかりやすいのだ。カウンターの右ストレートが、桜吹雪ごと相手キャラクターを吹き飛ばす。





『これもカウンターっ!ダイキ選手、隙が全くありません!ゲン選手のゲージは残りわずか…ここから盛り返すことはできるのか!』





「桃花水」の再使用時間を減らす効果は残り30秒。そろそろ決着のとき。次で決める。





『線上に揺蕩たゆたう粒…霰覆(あられこぼ)し!』





厄介やっかいな技が続く。「霰覆し」も連撃系の技。ただ、「桜吹雪」と違い、攻撃が往復してくるのだ。前からの攻撃だけに対処すればよいわけではない。前後、前後と方向をスイッチしつつ、受ける必要がある。




―――方向キーを動かすだけなんだけど…。




一つ動作が増えるだけで、タイミングがよりシビアになる。ここは回避にてっしたいところだが、「桃花水」の効果で「桜吹雪」が既に使用可能となっている。このゲーム、技の途中でもカットインが可能。こちらが次の攻撃に備えて後ろを向いた瞬間に合わせられると、結構厄介。さすがに背後からの攻撃を回避することはできない。




―――…狙いは一撃目。




前方向からの攻撃が確約かくやくされている一発目。これをカウンターするしかない。「霰覆し」には吹っ飛ばし無効はついていない。技を止めてしまえばこっちのものだし、次のカウンターでおそらく削り切れる。




―――今っ!




『決まったー!最後も重すぎるカウンターの一撃っ!第一試合、勝者は…ダイキ選手ーっ!』

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