030 電話
試合は…まあ、勝った。ノーダメージ。完封。ベスト8進出決定。
「いやー、ダイキ先生!さすがでございますです。お肩でもお揉みいたしましょうか?…なんてね。おめでと。」
俊が太鼓持ちになってしまった。ツッコミを入れたいところなのだが、その元気がない。さすがは全国大会。ワシさんレベルのプレイヤーさんがごろごろ。気なんて抜けたもんじゃない。最初から最後まで、気はりっぱなし。
「ありがと。ふへー…疲れた。」
俺のカウンター戦法は周知の事実であるため、今回の大会では「春霞一閃」の採用率が急上昇した。「速度強化」の採用率も上がっている。
この大会、俺にはあまり影響ないのだが、一つ厄介と言われているルールがある。それが「ベスト8まで技の変更不可」というもの。俺とベスト8までに当たる可能性のあるプレイヤーさんは、カウンター対策の技を入れざるを得ないという状況になったのだ。情報管理の都合らしいが、俺にとってはむしろ好都合。
「大樹…本当にすごいんだな…。それにしても、春霞一閃のラッシュのとき、すごかったな。よくかわせるもんだ…。」
「かなりやばかったんですけどね…。」
東のおっちゃんが感心してくれている。まあ、俺もあのシーンは今日のベストだと思っている。ベスト8をかけた試合だったのだが、相手は開幕から全力戦闘を展開。春霞一閃を連発し、波状攻撃をかけてきたのだ。
―――結構焦った…。
おそらく俺と当たったらこうする、と決めていたんだと思う。迷いがない感じがした。焦りも重なって、開始20秒ほど回避で手いっぱい。
しかもサインの女性、ゆみさんが応援してくれていたのだ。負けるわけにはいかないとプライドが燃え上がり、余計にからまわり。波状攻撃が一段落したところで、なんとか落ち着きを取り戻し、カウンターで押し切った。
「そういえば大樹くーん?スマホを熱心に握りしめて、どうしたのかなー?」
俊にめっちゃいじられる。自分でも謎の行動力を発揮し、ゆみさんに電話番号を渡してしまったのだ。普段ならば絶対にできない行動なのだが、人との出会い、それは一期一会かもしれない。考えるよりも先に一歩踏み出していた。
「あーもう!電話待ってるの!かかってこんかなーって!」
しばらくはネタにされそうだ。下手をすると、亜美からもいじられるかもしれない。




