表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/64

003 景品

「昼からでも良い?俺、午前中に歯医者さんの予約入れてるんだ。」



「もちろん。じゃあ、1時くらいに、ここで。」



スマホを取り出し、スケジュール管理のアプリを開く。時間だけ入れておけば、忘れることもないだろう。



―――あらら…充電ないじゃん。



ここのゲームセンターと家は目と鼻の先。そんなに困らないが、コンビニエンスな現代社会を謳歌おうかする俺にとって、スマホの充電がないということは、結構な危機。急いで帰らねばと腰を上げた瞬間。



「お、いらっしゃい!」



東のおっちゃんだ。サーフィンが唯一無二ゆいいつむにの趣味で、臨時休業が掲げられているときは、十中八九、海へ遊びに行っている。日焼けした肌とはちきれんばかりの筋肉。俺の細い体躯たいくとコントラストをなしている。



「ども。」



ペコリと頭を下げる。顔をあげると、なぜかおっちゃんがにやにやしている。俺の顔に何かついているのだろうか。



「大樹君にお知らせがありまーす!はい、これ。」



おっちゃんに1枚のチラシを渡された。



「ありがとうございます…えっと、大会予選会のご案内?」



FPSというゲームの大会。レトロゲームに勤しむ俺でも知っている、超有名タイトルだ。基本的には格闘ゲームに分類される…と思う。特徴としては、技を自分でセットできるところ。攻撃にかたよった技構成にすると、防御(ぼうぎょ)手薄てうすになる。その逆もまたしかり。そこに戦術性が生まれ、ネットにはさまざまな技構成が紹介されている。



「おぉー、FPSじゃん。」



「俊、やったことあるの?」



俊はあまり格闘ゲームを好まないので、少し意外だった。さっきのゲームは付き合いで遊んでくれているだけ。



「うん。まぁ、再生数が上がるし。」



「なるほど。」



俊はゲーム実況の動画投稿(とうこう)者として、それなりの地位を得ている。特にシミュレーションゲーム界ではかなりの有名人。公式大会にゲストプレイヤーとしてお呼ばれすることもあるらしい。いわゆる顔出しはしていないため、中の人が高校生であることを知る人は少ない。


それにしてもおっちゃん、なんでこのチラシを俺に。



「ほら、優勝賞品のところ。」



おっちゃんが指さした先、そこには。



「あっ!これっ!」



思わず大きな声が出てしまった。欲しくてほしくてたまらない、最新のゲーム機ではないか。何回見てもたまらない近未来的なフォルム。今も魅力みりょく的なタイトルが続々とリリースされている。


大会の規模がどれほどかは知らないが、参加してみる価値はありそうだ。大会の日程は…。



「げっ!3日しかない…。」



エントリーに至っては今日の5時まで。あと30分しかない。実は昨日までテスト週間で、ここには顔を出せていなかったのだ。ぎりぎり間に合ったので、幸運だったと思おう。



「これ、エントリーの書類ね。親御(おやご)さんの同意書は、当日までに届ければ良いから。」



「ありがとうございます!」



もうゲーム機を手に入れた気分になっている。捕らぬたぬきの皮算用。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ