027 補正
「やっぱりカウンター、弱体化かぁ。」
昨日の報告も兼ねて、俊のお家で談笑中。テーブルの上にはポテトチップスとチョコレートが並んでいる。とりあえず、チョコレートを一つ口に放り込む。
「うん。…あ、飲み込んじゃった…。まあ、仕方ないよね。カウンター禁止とかにならなかっただけ、まだよかったかな。」
カウンターしかない俺にとって、カウンターは生命線なのだ。唯一の武器を弱体化されてしまった点はマイナスだが、結局のところ、ダメージを受けなければ良いこと。
制限時間内に決着がつかなかった場合、体力ゲージの多い方が勝ち。こちらは100パーセント残せるのだから、一撃当てて、あとは回避でも問題ないわけで。
「いつ公表されるん?」
「もう出てるんじゃないかな?さっき、連絡が来たし。」
まだ公開されていないことをペラペラと話すほど、口が軽いわけではない。電話口で坂崎さんに確認もとっている。
「あ、本当だ。うわ…1.5から1.1に下げる…文字で見ると余計にえげつなく感じる…。」
「でしょ?俺も書類もらったとき、結構ショックだったもん。技使わないから、ただでさえ平均よりも長くかかるのに…。」
不満があるとすれば、そこ。今まで以上に一試合が長くなってしまう。いくら反応チートの俺でも、集中力に限界はある。連戦なんて大会くらいでしかないから良いものの、決勝戦にたどり着くころにはボロボロな気がする。何かリフレッシュできる方法を模索しなければ。
「大樹のことも出てるじゃん。ほれ。」
俊のスマホには、「地方大会におけるプレイングについて」と記された文章が表示されていた。これが例の公表文だ。個人情報保護の関係で、俺の名前や反応チートについては伏せられている。まぁ、大会の動画は公開されているので、保護もへったくれもない気はするが。
「えーっと…なになに。
先日開催されました地方大会において、過去に例をみないプレイングスタイルが確認されました。この件につきまして、運営として調査いたしましたところ、当該プレイングは正規の手法によるものであり、何ら問題のない行為であることを確認いたしました。その上で、現状のゲームバランスを鑑み、当該プレイヤー様の同意を得て、別紙のとおり補正数値を変更することといたしました。誠に勝手ではございますが、ご理解賜りますようお願い申し上げます。
ふーん。過去に例をみない…ふふ。ということは、大樹のカウンターって純粋にやばいんだね…。」
苦笑いしか出てこない。そう、純粋にやばいのだ。何せ「反応チート」だもん。
今更だが「チート」という言葉、不正という本来の意味で使っているわけではない。常識を超えるほどすごい…的な意味で使っている。うまく表せる言葉の持ち合わせがなかったので、大好きなアニメの言葉から拝借している。
「そのことなんだけどさ…俺、やばいらしい。」
さすがに細かい数値まで言うつもりはないが、俊にならばある程度伝えても良いだろう。俊にまで予測しているなどと誤解されてしまっては、たまったものではない。
「へ?何が?」
「なんか、反応速度がやばいんだって。チート級に。」
「…うん、知ってた。知ってたっていうか…気づいてた。」
予想外の反応。もっと驚いてもらえると思っていた。
「えっ!?知ってたの!?」




