026 能力
本作の記述内容(反射に関する記述を含みます。)は、実際の科学的意義と大きく異なります。ストーリを展開するうえで作者が創作したものであり、架空の設定に過ぎません。あくまでもフィクションとしてお楽しみください。
「…ひとまずご説明いたしますね。
まず、FPSの方針といたしまして、12フレームが全ての基準となっております。一説には、集中状態における反応速度が0.2秒程度とされております。それをフレームに換算すると、12フレームとなります。」
さっきのキャラクターの動き、普通に動いているように見える映像だが、実際は静止画の連続に過ぎない。パラパラ漫画が動画のように見えるのと同じ理屈だ。この1枚をフレームと呼び、単位秒あたりのフレーム数が多いほど、なめらかに見える映像となる。
「そしてカウンターですが、要求される回避のタイミングを12フレーム以下に設定してあります。実際にカウンターされてしまった後で申し上げにくいのですが…基本的にカウンターはラッキーで起きる程度と考えております。」
「それじゃあ、俺は12フレーム以下で反応しているってことですか?」
理屈的にはそういうことになる。狙ってカウンターができているということは、反応速度が12フレーム以内ということと同義だ。
「はい。こちらが今回の測定結果です。」
加瀬さんがパソコンの画面をこちらに向けてくれる。そこには。
「…3フレーム?」
「私もいまだに信じられませんが…香坂様は3フレーム、0.05秒の世界に反応できるということのようです。」
なんということでしょう。
「これは…想像以上というか、なんというか…。」
社長さん、頭を抱えてしまった。数秒の沈黙。0.05秒の世界を感じる俺にとっては、長すぎる静寂。
「…FPSに搭載されているすべての技は、カウンターの対象です。あくまでもプログラム上のお話ですが…。」
「それじゃあ、ダイキ先生にはカウンター不可の技も通用しないと?」
「はい、社長。カウンター不可とされている技は、要求フレーム数が5です。一般…と申し上げると語弊がありますね…多くのプレイヤーは反応できる速度ではありません。ただ、香坂様はさきほど申し上げた通り、3フレームですので…。」
カウンターできてしまう。遠井さんの話によると、春霞一閃はカウンター不可の代名詞的存在なのだそう。カウンター不可と明示されているわけではないが、ここに分類される技はいくつかあるらしい。
「それじゃあ…大樹には、誰も敵わないってこと…。すごいじゃないか!大樹!」
おっちゃんがとっても嬉しそうだ。肝心の俺はというと、なんというか、実感がわかない。反応速度がヤバいということはわかったのだが、嬉しいとかそういったポジティブな感情がまだ訪れない。事実を認識している段階。
「あ、あははは。
…えっ…えぇーっ!俺が、0.05秒で反応!?ど、どんな攻撃でもカウンターできるんですかっ!?」
まさか、俺に「反応チート」が備わっていたとは。
ようやく情報の処理が終わったようで、感情の波が押し寄せてきた。結果、自分でも信じられないような大声を出してしまった。
「…あ…すみません…。」
「いや、これは驚くべきこと…。もちろん、我々がこの事実を公表することは絶対にないですし、ダイキ先生の反応速度を鑑みて現状の設定を変更することもありません。このことはインテグラル社長としてお約束します。」
確かにセンシティブな個人情報ではあるので、その配慮はありがたい。
「よろしくお願いします。」
「ただ…これだけネット上で議論が盛り上がっておりますので、一応、公式としての見解を出させていただきたいのですが…。事前にお見せいたしますので、確認の方をよろしくお願いします。」
こればかりは仕方がない。今はポジティブな評価がほとんどのようだが、俺が実際に全国大会で優勝するようなことがあると、ネガティブな反応が増えてくるかもしれない。俺だって後ろ指をさされるのはごめんだし、変な噂をたてられるのも困る。運営として対応してもらえるのならば、お任せしたい。
「わかりました、よろしくお願いします。」
「いやー、こんなにすごいプレイヤーさんに遊んでもらえるとは…。ダイキ先生でも楽しめるコンテンツを最速で開発しますから、楽しみにお待ちください!」
社長さん、スイッチが入ったらしい。ゲームの可能性は無限大だ。きっととんでもないコンテンツが導入されることだろう。ユーザーのひとりとして、楽しみに待っていよう。
「まずは新技の開発からだな…うん。開発部の方で、調整中の新技が…。あ、これは失礼。では、このあたりで…。本日は、本当にありがとうございました。」
そんなこんなで会談は無事(?)に終了した。薄々感じてはいたものの、突然現れた衝撃の事実。困った、今夜は眠れないかもしれない。
―――じゃ、じゃあ、俺、全国大会で本当に優勝しちゃったりして…。
捕らぬ狸の皮算用から、掌中にランクアップ。あとはつかむことができるかどうか。
「あの…大樹。申し訳ないんだけど…おっちゃんとFPSやってくれないかい?いや、1回で良いから!あのカウンター、受けてみたい…。」
「良いですよ。あ…。」
財布を持ってきていなかった。
「ん?あ、お金かい?大丈夫、おっちゃんが出す。」
こうして俺とおっちゃんの戦いが幕を開けた。ちなみにこの戦い、半年以上続くことになるとは、このとき、知る由もなかった。




