023 建前
結局、俊の予想は当たっていた。ポストに届いていた書類には、カウンターの攻撃力調整について書かれていた。具体的には1.5倍を1.1倍に下げるという提案で、俺に賛否を求める内容だった。書面上は。
―――要するに、受け入れてくれってことだね。
普通、こういった連絡すらなく調整が入ることの方が多いと思う。そもそもゲームを提供しているのは運営サイドで、俺はお客さんの一人にすぎない。俺一人の意見のためにゲームバランスが崩壊し、それこそ他のお客さんが離れてしまうことになれば大惨事だ。
―――連絡をくれただけ、ありがたいと思おう。
飲み終えたペットボトルを処理して、再び書類の続きに目を通す。
ちょっと勘ぐりをするならば、俊の存在が大きいと思う。俊が事務所を通して動画の使用許諾申請を出すとき、「友人が参加するので、その映像を使いたい」旨を伝えていた。その友人、まあ、どう考えても俺なわけで、俺は登録者100万人ごえのゲーム実況者を友人に持っているという事実がある。そんなことするつもりはもちろんないが、変な対応をされて俺が公表した場合、どう考えても企業側が負うダメージの方が大きい。いわゆる炎上というやつ。
それは深読みしすぎだとしても、連絡もなしに俺だけが不利益を受ける調整をされたら、いくら俺でも不快感を覚える。
―――まあ、一応連絡はしましたよってことだよね。
こればかりは仕方ない。俺はあくまでも遊ばせてもらっている立場。作っている側の調整に従うしかないのだ。
■
FPSの運営会社から書類が届いて1週間。父に同意書を郵送したりといろいろあって、今日の午後、おっちゃんのお店で運営会社の人と会うことになった。
「…。」
緊張からか、食欲が出ない。自分で作ったお昼ごはん。ひとり暮らしなので、食べきらないともったいない。少し冷めてしまったオムライス。ケチャップの甘酸っぱい匂いが広がっている。
30分かけてなんとか完食した。時計を見ると、もう少しで1時になる。予定は1時半なのだが、さすがに遅れるわけにもいかない。おっちゃんのゲームセンターは目と鼻の先。15分前くらいにはついておこう。
「歯磨きー、歯磨きー。」
変な節回しで口ずさみながら、歯ブラシをとりに行く。まだまだ寒さが残っているので、暖房がある部屋から出るのは、そう、ちょっと勇気がいるのだ。




