表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/64

002 連勝

もう一勝負、と思いポケットを探るが、10円玉が3枚のみ。両替をしてまで続けるほどの熱量ねつりょうはないので、今日はここまでにしよう。とりあえず、自販機コーナーのイスに腰かける。



「やっぱり大樹にはかなわん…。」



炭酸飲料のフタを開ける音が、しゅんの声をかき消した。



「ん?なんか言った?」



「いや、何でも。そういえば、新しいリズムゲーム入ったらしいよ!さっき(あずま)のおっちゃんが宣伝してた。」



東のおっちゃんとは、ここの店主さん。ゲームセンターの開業が、確か俺が小学校に入ったときだったから、もう10年来(ねんらい)の付き合いとなっている。両親が家を空けることの多い俺にとって、頼れる大人の一人。



「リズムゲームかぁ。ゲーム機の賞品とかついてないかな?」



「大樹、最近そればっかじゃん…。」



俊にあきれられてしまったようだ。というのも、最近の俺は、最新のゲーム機が買えなかったことで頭がいっぱいなのだ。正確に言うならば、予約の抽選ちゅうせんを突破できなかった。


お年玉をせっせとめ続け、古着屋のバイトで帳尻ちょうじりを合わせ、やっとの思いで準備した大金たいきん。使うあてが無くなってしまった。今更(いまさら)言っても仕方ないのだが、連勝記録にこだわらなければ、もう少し早くお金を貯めることができたと思う。タイミングが違えば、当選していたかもしれない。この何とも言えない後悔こうかいを、半年前の俺に伝えたい。



「でも、さすがにちょっときてきたし…今度試しにやってみようぜ。」



本音ほんねが漏れてしまった。


さっきやっていたのは格闘かくとうゲーム。使用するキャラクター程度ならば選べるが、基本的にカスタマイズできる部分はない。その分プレイヤースキルが試される。完璧な解答などない、そんな感じでやり込んできた。


ただ、100連勝したあたりから、若干の「飽き」を感じ始めた。簡単に言うと、自分のなかで作業ゲーになってしまったのだ。相手の攻撃を見切り、ただカウンターを当てる。それだけ。単純なゲームは、一般的に「奥が深く飽きづらい」と聞いていたが、やはり限度はあるのだろう。



―――でも…趣味っていう趣味もないし。



一時期、あるマンガにドはまりしたことはあるのだが、数カ月前に最終話を迎えてしまった。足跡が描かれた最後のコマを見たときの感動、今でも鮮明に覚えている。思いで補正もかかり、他の作品を食わず嫌いならぬ、読まず嫌い状態。良くないとは思いつつも、どうしたって手が出ない。



―――カメラとか買ってみようかな?



特に興味があるわけではないのだが、何となく格好良いイメージがある。俺に似合うかどうかは別として、ああいうメカメカしいものにはあわい憧れがあるのだ。


行く先を無くしてしまったお金がある。良いカメラが結構な値段だと聞くが、初心者向けのカメラなら手が出せるかもしれない。



「明日さ、駅前の電気屋さん行かない?」



ぜんは急げ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ